福岡県糸島市 司法書士 ブログ

ムシャクロツバメシジミ

 

台湾からの客人

この写真の中央部に写っているのはムシャクロツバメシジミ

Tongeia filicaudis です。小さなチョウで, 我が国にもともと

生息していた種類ではありません。

台湾からの侵入と考えられ, 最初に発見されたのは2013年,

名古屋だったはずです。 輸入された多肉植物に卵・幼虫・蛹

がくっついて我が国に入って来たと考えられます。

我が国には,, 同属のクロツバメシジミ Tongeia fischeri

生息しており, 交雑や生息地の競合による影響が心配される

ところです。 ここ糸島でも局限された地域にクロツバメシジ

ミが生息していますので, ムシャクロツバメシジミとの関係

がどうなるか?気になります。

定着・分布拡大

我が家の庭には結構な多肉植物があり, 近所の公園にも

グランドカバーとしてメキシコマンネングサ Sedum mexi-

canum が植えられているため, ムシャクロツバメシジミが

発生し, ここ数年は定着する状況にありました。

昨年末から今年初めの雪や寒さの影響で,さすがに死滅

したのではないか, と思いましたが,生き残っていたよう

です。 新たな個体の流入の可能性はあるものの, 春先の

この時期にかなりの個体数を見かけますので, 越冬成功

ということでしょう。

多肉植物ブームは今も続いていますので,ムシャクロツバ

メシジミが今後もその分布を拡大させる可能性は大きいと

考えなければなりません。

外来種の影響

最近はペットとして様々な外来種が売られるようになり,

それらを飼う人が増えていますが, 一方で「飼育放棄→

野外遺棄→繁殖→在来種を圧迫」という問題も生じてい

ます。 古くはセイタカアワダチソウ Solidago canadens

-is var.scabraの繁茂が問題になった時期がありました。

今はすっかり諦めたのか, 駆除作戦が展開されるような

ことはなくなり, 秋になると野原を覆いつくしています。

セイタカアワダチソウももとはといえば,切り花用に人為

的に導入された種です。

人間のエゴ?

美しいから,かわいいから,あるいは珍しいからという

理由で動植物が国内に持ち込まれ, 結果として野生化し,

それが自然を変容させてしまう。こういう現象は多く見られ

ます。

本当は, 日本に分布を広げる可能性がなかったのに, 上記

のような理由で我が国に持ち込まれ, ある時期から敵視さ

れてしまう。 こういうケースも少なくありません。 たとえば,

奄美大島のマングースはハブ駆除のために放されましたが,

ハブ駆除には殆ど活躍せず, アマミノクロウサギの天敵と

なり, 最後は駆除対象にされてしまいました。  まさに人間

の都合だけ。 身勝手な話というほかありません。

では, 我々が一旦導入した外来種に関しては, 受け容れて

「多様性」のひとつとして認めるべきでしょうか?

難しい問題です。

ムシャクロツバメシジミに関しては, 私がかつて所属して

いた日本鱗翅学会でも駆除作戦を募集した時期があるよ

うですが, 最近はあまり駆除云々という話を聞かなくなり

ました。

今後の分布動向を注視したいと思っています。

我が家の多肉植物もムシャクロツバメシジミの生息を助長

しており, それらの多くが輸入された種であることを考える

と,ちょっと責任を感じたりもしているのです。

なお, 和名の「ムシャ」は「武者」ではなく, 台湾の地名であ

る「霧社」を意味します。

 

 

 

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