団鬼六という作家の名前を聞いて何を思い浮かべるでしょうか?
多くの人は「SM官能小説」でしょう。
あるいは、その名前を知らない人が多いのか。
知っていても知らないふりをしてしまう人も多い可能性があります。
「花と蛇」は、日活ロマンポルノ初のSM映画。
SMの女王と呼ばれた谷ナオミさんを生んだ作品です。
と、その分野に詳しいかのように書いていますが、私はみていません。
団氏はSM小説で大いに稼ぎましたが、一方で将棋の愛好家としての顔も。
赤字に陥っていた「将棋ジャーナル」の発刊を引き継いだこともありました。
将棋ジャーナル再建のために豪邸を手放す羽目に陥り、廃刊後に作家として復帰。
その後に著したのが「真剣師小池重明」です。
この小説はいわゆる実録であり、ドキュメンタリーに近い内容です。
読み応えがあります。
アマチュアながらプロにも負けない賭け将棋の王者小池。
性格破綻者だったようで、恩を仇で返すようなことを繰り返します。
それでも多くの人を魅了するような将棋指しでした。
それが小池です。
「新宿の殺し屋」という異名をとる真剣師から真面目なアマチュアに転向。
プロ編入の話も持ち上がりましたが、過去の素行の悪さから実現しませんでした。
その後は肉体労働などで生計を立てた時期があったようです。
そして、団鬼六氏の後援で再度復帰。
ところが、また悪さをやってしまい失踪。
40代で重病を患いながらも、最後にプロに対して連勝していたアマチュアと対局。
やせ衰えた姿で勝利を収め、それから間もなく亡くなっています。
団氏は最後まで小池という人物を憎めなかった、というよりは愛したようです。
「真剣師小池重明」は団氏の愛に溢れる筆致で読ませます。
なお、NHKーBSプレミアムで放送された「盤上の向日葵」に小池をモデルとする人物が登場しました。
竹中直人さんが演じた東明重慶です。