秋になるといくつかのマメ科植物が花をつけます。
ノダフジやヤマフジのように春季に開花するものや,
ハリエンジュのように初夏あるいはネムノキのように盛夏に花を咲かせるものなど
マメ科植物の花期が定まっているわけではありません。
しかし,ハギの開花に秋の訪れを感じるのは日本人ならではの感覚かもしれません。
今日は秋に開花する赤紫系のマメ科の花を紹介します。
ヤハズソウ Lespedeza striata は河川敷やグランドによくみられます。花は小さく目立ちません。
「ヤハズ」は「矢筈」で,葉をちぎると矢筈型になることから和名がヤハズソウになりました。
シジミチョウ科の数種類が食草として利用しています。
一般には知られていないシバハギ Desmodium heterocarpon です。
蝶に関心を持つ人にとっては重要な植物のひとつです。
シバハギは,分布が局限されるタイワンツバメシジミ Everes lacturnus の植草なのです。
タイワンツバメシジミはシバハギに依存しており,シバハギの開花期に合わせて羽化,配偶行動の後に産卵。
孵化した幼虫は蕾や花を食べ,幼虫のまま越冬し翌年に蛹化,開花期に羽化するという生活を送ります。
花期は北に行くほど早く,沖縄本島では10月くらいになります。
大隅半島の南端佐多岬では6月に開花するシバハギが存在します。
ここではタイワンツバメシジミも6月と9月から10月の年2化で,これは非常に特殊な例です。
なお,シバハギは福岡県では絶滅危惧ⅠB類とされています。
もっとも,住宅地の開発をした直後や法面工事をした後にしばしば侵入して繁茂しています。
ただ,その状況が長く続かずに消えてしまうことが多いのはたしかです。
写真は我が家兼事務所の隣の公園で撮影しています。
残念ながらタイワンツバメシジミはいません。
最後はクズ Pueraria montana です。
あちらこちらで繁茂し,害草化しています。
電柱やフェンスなどに這い登って景観を損ねることが多く,嫌われものになっています。
クズを寄主とするマルカメムシが大発生し,これが秋季に洗濯物などに忍び込んだりすることもあります。
カメムシゆえ強い臭気を放ち,せっかく洗った衣類を洗いなおす羽目になったりするのです。
その一方で,葛粉や葛根湯の原材料でもあり,吉野葛や秋月葛は銘品として知られています。
私は上記の公園等のクズの駆除にかなり時間をかけていますが,クズとの闘いは先が見通せません。
クズの花穂はシジミチョウ科の数種類にとっては好適な食餌です。
この時期には卵や幼虫を見つけることができます。
★ 上記の植物の写真は,この方の縄張り巡回同行時に許可を得て撮影しています。