私は司法書士で、「民事の専門家」ということになっています。
しかし、私はそうは思っていません。
司法書士が「民事の専門家」であるとは思っていないという意味です。
民法や民事訴訟法あるいは会社法に商法ー精通しているとは思えないのです。
これらは試験科目です。
だから、とおり一遍のことを知っている司法書士はいくらでもいます。
「とおり一遍のことを知っている」とは、条文や判例の存在を知っているくらいのレベルです。
それらを使って、特に判例のフレームワークを使って事案を解決するーこれが壁です。
そういう訓練を受けていないのです。
そのレベルで果たして「専門家」と呼べるのか?
民事保全法や民事執行法となると、最初から「捨てて」受験する人もいます。
憲法や刑法にしてもそういう声を聞きます。
でも、憲法を学ばずして・・・法律に関わるのはかなり危ういと思います。
それでも試験には合格できてしまいます。
合格すると破産手続に関する書類を作る機会に出会う人も少なくありません。
破産法や民事再生法を学ばなければなりません。
でも、精通するまでもなく書類作りはできてしまうのです。
消費者契約法もそう。学ばずとも、実務はなんとかなってしまいます。
こういう感じですから刑事訴訟法を学ぶ人はまずいません。
一応は、検察庁への提出書類作成も司法書士の業務なのですが。
ほとんどやる機会がないから学ばないーこれは仕方がないかもしれません。
けれども、刑事事件について何も知らない「法律家」はまずいと思うのです。
私は自分自身を「法律家」とは思っていませんが、法律に関する知識のバランスは考えます。
もともと刑事訴訟法は得意科目でした(学生時代)。
だから、今も折に触れて刑事訴訟法の本を読んでいます。
ここで「刑事政策」です。
刑事政策も大学の講義科目のひとつです。
司法試験の選択科目からはずれたので、受講生が減ったような話も耳にします。
ただ、刑事系の学びには欠かせない科目です。
もっと学ぶ人が多くてもよいのではないか。
「民事の専門家」である司法書士であっても、犯罪者の処遇や被害者対策の知識くらいは・・・
私はそう思っています。
依頼者との雑談でも犯罪報道に関する話題は出ます。
ここでもバランスを考えます。
法律全般についてはできるだけ学ぶ。
それが「専門家」の普通の姿勢ではないかと思います。
依頼者から聞くことになる様々な問題に対処するためでもあります。
そして、他の分野の知識が目の前の問題の解決のヒントになることもあるのです。
というわけで、久々に「刑事政策」の本を買いました。
理由は、これまで使っていた本が改訂されないままであること。
それゆえ最新の議論を読むことができないのです。
そして、たまたま刑事政策の知識を必要とする仕事をしたからでもあります。
刑事政策の知識を必要とする仕事・・・ご想像にお任せします。