福岡県糸島市 司法書士 ブログ

本家を家督相続

不動産登記の仕事をしていると、ときたま「家督相続」に出会います。

昭和初期の相続ゆえ、今も当時の「家督相続」という言葉を使うのです。

登記の申請をする際にも「昭和10年10月10日家督相続」と書きます。

無論、今の時代には「家督相続」など存在しません。

でも、相続が生じた時代にはあった。

だから、そのときの法に従って登記の申請をする。

このあたりが、司法書士はマイナーでマニアックな仕事たるゆえんです。

 

ところが、今の時代にも観念としての家督や本家は生きています。

以前に親戚から、

「うちが本家になるんだよね?」

と訊かれたことがあります。

「じゃあ、そこの長男であるおまえが家督を継ぐのか?」

「そうみたい」

「おまえ、いつの時代に生きている?今の時代には家督もなければ本家もない」

「え?そうなん?」

数年前の中学生との会話です。

これをみてもわかります。

いまだに日本人は家督相続とか戸主の観念を持ち続けているのです。

きっと両親から

「おまえは長男だから家を継ぐんだよ。お父さんのお兄さんはよそに家を建てたから、

もう本家には戻って来ないよ。お父さんが当主なんだからね」

とでもいわれたのでしょう。

この両親は私より年下。

「●●家 ◆◆家 結婚披露宴会場」といまだに表記されることには理由があるのです。

人々は今も「家」にとらわれています。

 

小泉進次郎元環境大臣は、自民党総裁選に出馬するにあたり、

「夫婦別姓制度を1年以内に実現する」

と公約を掲げました。

国民の間で議論が盛り上がっているわけでもありません。

ニーズが高まっているわけでもありません。

アンケートではほとんどの人が「夫婦同氏を選択する」と答えています。

衆議を尽くさずに制度を作ろうとするようでは民主主義を理解していないのではないか?

国会議員を長くやっていらっしゃるわりには危なっかしいな。

そう感じました。

 

たしかに「選択肢」が増えることは悪い話ではありません。

少ないながらもニーズがあるとすれば、それに応えることになるからです。

しかし、我が国の家族観を根幹から揺るがすようなことを

「1年以内に実現する」

というのはどうなのか?

拙速に過ぎる印象です。

 

「妹には口を出させません。あれは、もうよその家の人間ですから」

相続に関する一般相談でこういう発言を聞いたこともあります。

この方も私より年下でした。たしか、

小泉元大臣と同じくらいの年齢だったと記憶しています。

私は、

「妹さんにも相続権があり、遺産分割協議をしなければ」

ということを説明しました。

素直に聞いてくださったので安心しました。

「俺は■■家の当主ですよ!」

という反応はなかったのです。

「とうしゅ」といえば、自民党の党首は首相になる可能性が極めて高いのです。

小泉元大臣が党首=総裁になると、総理大臣にもなるでしょう。

父親である小泉元首相が雇用環境を壊したように、彼が家族制度を・・・

心配になります。

 

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