日頃からお世話になっている理髪店に昭和の香り漂うものがありました。
ダイヤル式の公衆電話です。
平成生まれでも後期になると「ダイヤルを回す」という意味がわからない人がいます。
こういう歌を聴くと“?”かもしれません。
♪ 僕はダイヤル回したよ
恋のテレフォンナンバー6700
ハロー ♪
♪ ダイヤルしようかな
ポケットにラッキーコイン ♪
♪ ダイヤル回す あの娘に伝えて まだ好きだよと ♪
♪ ダイヤル回して 手を止めた
I’m just a woman
Fall in love ♪
♪ 煙草を吸ったり消したりしながら
君からの電話待ってはみたけど
こらえきれなくてダイヤル廻せば
ワンコール出たのに 待ってないふりさ ♪
ダイヤルを廻すとダイヤルが戻る時間がかかります。
またダイヤルを廻して戻る。
その時間のもどかしさが恋特有の焦りを生むのです。
ダイヤルを廻すだけでそれなりの時間がかかる。
その間のときめき。
今はそういうものがなくなりました。
スマホでタップです。
それも登録してある番号ゆえワンタップのみ。
携帯電話の登場により、いつでも連絡がつくようになりました。
その結果として恋のスリルは失われたと思います。
ダイヤルを廻す時間も必要なくなり、じれったさも失われました。
携帯電話が存在しない時代に、許されぬ恋に身を焦がす男を描いた作品があります。
「テニスボーイの憂鬱」(村上龍)では愛人に連絡をするために公衆電話を使います。
かけても出ない。車で決まったルートを一周してまたかける。やはり出ない。
その繰り返しが、徐々に主人公にとって「まだ恋は終わっていない」という実感に変化する。
鮮やかな表現でした。
そういう恋のスリルが溢れる時代はもう戻って来ません。
★ 歌詞は上から順に
フィンガー5「恋のダイヤル6700」(1973年)
尾崎亜美「マイ・ピュア・レディ」(1977年)
チェッカーズ「涙のリクエスト」(1984年)
小林明子「恋におちて-Fall in loveー」(1985年)
稲垣潤一「1ダースの言い訳」(1986年)