司法書士にとって「割がいい仕事」、それは決済立会です。
不動産取引で融資の現場に立ち会う。
売買契約の成立を司法書士が確認して銀行に融資OKを告げる。
売買契約成立の特約である代金授受は銀行融資によるのです。
不動産の売主の住所変更登記があれば、それも合わせて受任。
融資を受けた買主の抵当権設定も合わせて受任。
代金を受け取った売主の抵当権抹消も合わせて受任。
所有権移転の前後にいくつかの登記をすることになります。
これらの登記申請代理に関する報酬が司法書士に支払われます。
融資OKの責任をもつ立場なので、その報酬も。
ということで、概ね10万円以上の報酬を短時間で手にできるのです。
相続のように戸籍を読み解くような手間はかかりません。
前日に受任して、翌日に処理することも可能です。
売買契約書は不動産取引用の定型のもの。チェックは簡単です。
抵当権設定の前提である金銭消費貸借契約について、銀行の抜かりはありません。
あとは、売主のなりすましに注意する。
こういう仕事です。
内容的にも「割がいい」のです。
高度な法的知識は求められません。
この業務が月に5件前後あれば、事務所経営は安定するでしょう。
で、私もそれをやっているか・・・
といえば、あまりやっていません。
特定の不動産仲介会社との提携打診もすべてお断りしました。
だから最近は決済業務の打診もあまり受けなくなりました。
端的にいえば、興味がないのです。
理由は面白くないから。
無論、決済中心の司法書士業務のあり方を否定するつもりはありません。
事務所経営を考えれば、決済中心は正しいと思います。
ところが、私は事務所経営の安定化とか利益追求を全然考えたことがないのです。
だから個人事業主としては「失格」の面があります。
私が仕事を選択する基準は、「興味を持つことができるか?」が第一。
そして、「私がやるべきかどうか」が第二です。
開業した頃にいわれました。
「決済とかバリバリやるでしょ?すぐに車庫にBMWが並ぶでしょうね」
私は内心驚きました。
カネ儲けがうまいと思われたようなので。
並ぶ車がアストンマーチンやコルベットではなくBMWなのはなぜ?
と思いつつ、
「車庫には1台分しかスペースがないので、並ぶことはないですよ」
とだけ答えておきました。
私が決済業務をまったくやらないかといえば、そうではありません。
個人的信頼関係で結ばれた方の依頼であれば、お受けしております。
不動産仲介会社との関係ではなく、その従業員個人や経営者個人との関係で。
それは、やはり「渡世の義理」があるからです。
これに反するわけにはいきません。
それで、時折ですが決済業務を受任しています。
あとは、登記に関する限りは基本的にスポットの仕事。
ただし、特定のルートを通じての受任は年に何件かあります。
これは、親しい弁護士からの依頼などです。
そのほか、裁判書類作成業務はいくつかのルートからの受任です。
債務整理はリピーターなどいようはずもありません(いたら問題)。
これは完全にスポットですが、つきあいの中からの紹介や依頼が多いです。
トラブル処理も同様。
というように、経営という視点からはずれた事務所経営をしております。
おかげで、時間的な余裕をもちやすく、個人的興味に基づくお勉強もできる環境です。
たとえば、昨日も仕事を午前中に片付け、午後からは相続法に関する判例を調べていました。
司法書士会の委員をいくつかすることもできています(これは結構忙しいのですが)。
業務に追いまくられ、カネは入ってくるけど・・・みたいなスタイルだけはご免蒙りたいです。
そのせいか、今も車は10年ほど前に購入したトヨタアクアのままであります。