30年前に放送された連続テレビ小説「ひまわり」。
今、再放送されています。
松嶋菜々子さんが若くキラキラ。
ドラマの中で、奥田瑛二さんが演じる赤元(あかげん)こと赤松元基弁護士が登場します。
主人公のぞみさんと上川隆也さん演じる星野君が司法試験に合格。
その際、赤元(あかげん)は二人にプレゼントを贈ります。
それが、新しい六法全書と基本書なのです。
六法全書は法曹が普通に使う「模範六法」(三省堂)です。
当時、判例つきの中型六法全書は模範六法のみだったと思います。
ちなみに、私も学生時代から模範六法愛好者です。
さて、基本書は・・・?
当時の司法試験は民事訴訟法と刑事訴訟法が選択科目でした。
少なくとも一方を必ず選択しなければならない必須選択科目という扱いです。
のぞみさんは刑事訴訟法選択者。
赤元は民事訴訟法の基本書をプレゼント。
星野君は民事訴訟法選択者ですから刑事訴訟法の基本書を貰いました。
それらが、どの本だったのか?

これは、放送当時に画面からは完全には確認できませんでした。
少なくとも、緑色のカバーまたは函の本があったのは間違いありません。
刑事訴訟法で緑色といえば、間違いなく弘文堂の松尾浩也教授の著書です。
民事訴訟法の場合は悩ましいところ。
弘文堂からは、兼子一教授の著書と三ケ月章教授の著書が出版されています。
いずれも同じ法律学口座双書で緑色なのです。

私は、これが長らく気になっていました(30年も!)。
気にする必要がなさそうですが、気になったのだから仕方がありません。
そして、遂に解明の時を迎えたのです。

緑色の本を貰ったのは星野です。
だから、松尾教授の刑事訴訟法で決まり。
のぞみさんがもらったのは民事訴訟法の本。
画面からは有斐閣の法律学全集の装丁であることが確認できました。

これは三ケ月教授の著書です。
三ケ月教授は有斐閣からも弘文堂からも民事訴訟法の本を出していました。
もっとも、当時は受験生に使われていたかというと、そうでもないはずです。
使われていたとしても、緑色の弘文堂の本の方でしょう。
あえて、有斐閣の法律学全集を渡す設定にしたのは、法律監修の方からの助言によるのか?
当時の民事訴訟法の基本書といえば、有斐閣の大学双書か新堂幸司教授の著書でしょう。
あるいは、実務用ということで渡すなら兼子一教授の本がベストかもしれません。
争いがあった訴訟物理論が旧理論で実務と一致するのです。
三ケ月教授も新堂教授も新理論の推進役でした。
刑事訴訟法の基本書は決定版がない時代です。
松尾教授の本は学生によく読まれていました。
放送当時は田宮裕教授の本が出版されていたはずで、こちらの人気が高まっていた時期です。
あえて、平野龍一教授の本でもなく田宮教授の本でもない本を選んでいます。
やはり、法律監修を務めた誰かの助言に基づいているような気がします。
実務書ではなく基本書をプレゼントするあたりにリアリティがあります。
実務家になるのだから実務書を贈るべきでは?と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
実務書はマニュアル的な本。基本を理解したうえで使う本なのです。
自分の考えをしっかり固める際に役立つのは基本書。
合格したばかりの二人にマニュアル本を贈るとすれば、あまりよい先輩ではありません。
しっかり基本的な考え方を身につけろよ。
基本書を渡す赤元は彼らにそう伝えているのです。
時代は流れました。
今は、民事訴訟法も刑事訴訟法も有斐閣の学生用教科書が人気を集めているようです。
図表が多く使われ、コラム欄なども設けられて読みやすくなっています。
のぞみさん達が合格した頃は、基本書の過渡期だったかもしれません。
ちなみに、私が机上で愛用する民事訴訟法の基本書は有斐閣の大学双書です。
これは共著で、脚注の使い方は著者間で統一されていないなど雑な作りのように見える本です。
が、それを補って余りあるくらいに凝縮された情報が盛り込まれ、しかもわかりやすい記述なのです。
もはや重版は期待できませんが、私には手放せない本です。
一方、刑事訴訟法は司法書士が繙くことがほとんどない法律です。
ただし、私は刑事訴訟法が(特に)好きなので、今も田口守一教授の本を読んだりしています。
今、のぞみ弁護士と星野弁護士はどういう本を参考にしているのでしょう?
今度はそれが気になりますが、こればかりは確かめる術はありません。
使用している六法全書は今も模範六法であることは間違いないと思いますが。
