司法書士の中にはデジタル化を加速させようという人がいます。
今後、電子署名があたりまえになり、すべてが電子情報で処理できる。
こういう状況が生まれることを想定しているようです。
そのためにはデータサイエンスを学ぶ必要があるという人もいるようです。
さて、本当にそうなのか?
平成18年、法務省は登記申請の電子化をスタートしました。
たとえば、売買で不動産の所有権が移転する場合にはこうなるのです。
売買契約書には売主と買主が電子署名。
印鑑証明書の代わりに電子証明書。
住民票の写しの代わりに住民票コード。
司法書士に対する委任状も電子署名。
紙を使う余地がなくなり、すべて電子の世界で完結。
これは画期的なシステムだ!
ということになっていたのですが、それから19年経過した今はどうか?
たしかに申請をするのは電子的な処理で済ませています。
しかし、売買契約書にはペンで署名し、実印を押印。
その印鑑証明書を添付。
住民票の写しも添付。
委任状はもちろん紙。
デジタル化されたのは申請以外にどこなのか?
印鑑証明書等をマイナンバーカードを使ってコンビニで取得することが増えたくらいか。
20年近く経ってもこのありさまです。
今回はデジタル化が一気に進むはず・・・ですが、はたしてどうなるか?
書類保管を電子情報で行う司法書士は少なくありません。
ところが、ここにも落とし穴があって、データをスキャンして読み込ませたはずが・・・
2枚の紙が重なってスキャンされて1枚分のデータが読み込めていない。
ディスクやUSBメモリに保管していたら、なぜか中のデータを取り出せない。
個人情報たっぷりのデータが保管されたUSBメモリを紛失した。
しかも、そこには誰のデータが入っていたか特定できない。
こういうことが起きているらしいのです。
そうすると、相変わらず紙で保管した方が無難ではないか。
書類を見比べるときにデジタルデータよりも紙の方がみやすいし。
書籍や六法全書をデジタルで利用しづらいのと同じです。
さて、多くの司法書士はどういうデータ保管をすることになるのでしょう?
そして、デジタル化にばかり注目していて大丈夫なのか?
登記申請件数は減少する傾向が出ています。
相続登記が義務化されても減少しているのです。
もはや司法書士が登記申請代理業務に頼って生きられる時代ではないような・・・
デジタル化よりも、まずは自分自身の業務に関する守備範囲を広げることが急務では?
いくらデジタル化を急いでも仕事がなければ廃業するほかないのですから。
ちなみに、音楽の世界ではデジタルからアナログへの流れが起きています。
CDが登場した際は、誰もが今の流れを想像しなかったでしょう。
アナログレコードの音が見直されています。
★ 上の写真は「ザ・ハングマン」に登場した「デジコン」。名高達郎(現在は達男)さんが演じました。
下は、「太陽にほえろ!」の「マイコン刑事」で石原良純さん。
デジコンは1981年に登場し、マイコン刑事は1984年の登場。
こうしてみると、80年代からデジタル化の波が押し寄せていたのかもしれません。
そのわりには進歩が遅いような・・・


