シマトネリコ Fraxinus griffithii は今や最もポピュラーな庭木になっています。
私がこの樹と出会ったのは31年前、宮崎市内の船塚公園でした。
当時は今のように庭木としては普及していませんでした。
トネリコにも常緑があるのか・・・と思ったのを覚えています。
時が経過してシマトネリコは常緑樹という特性からか人気が出ました。
もともと南方の種ゆえ東北地方などでは越冬が難しいと思われます。
しかし、九州では露地栽培でも楽々越冬します。
さらに繁殖力が強く、種子からの芽吹きであっという間に育ってしまいます。
そのため庭木として植えた1本のシマトネリコが、いつの間にか複数になっていたということも。
街路樹にも使われたため、道路沿いのお宅やアスファルトの隙間でも発芽し育っていたり。
今や庭で芽吹きを駆除しなければ大変なことになると認識され始めています。
たしかに風にそよぐような葉で、樹形もまあまあまとまるので庭木には使えるでしょう。
けれども上記のような繁殖力を考えると、実は庭木向きではないように思います。
★ シマトネリコの果実
成長も早く、数年で家の屋根を超えてしまう例もあります。
何軒かのお宅でこの樹を伐るお手伝いをしましたが、材質はかなり堅く、鋸で切るにはひと苦労。
常緑ということでの人気も考えものです。
「常緑」を「葉が落ちずにいつも存在している」と勘違いされる例もよく聞きます。
常緑樹は常に葉が存在するだけで、世代交代は起きます。
落葉樹のようにハラハラと散るのではなく、一度にバサッと落ちる感じです。
急に葉がなくなり新芽が目立つ姿になったと思いきや、すぐに芽が展開する。
これが常緑樹です。常緑ゆえ手がかからないということはありません。
というわけで、庭木の相談を受けた場合に、私はシマトネリコを勧めていません。
寧ろ、今起きている問題をきっちりお伝えするようにしています。
ご近所でも庭に3本のシマトネリコを植えたお宅がありました。
このお宅でも旦那さんが汗をかきかき全部伐り倒し、株も掘り上げて撤去しました。
成長の早さに手を焼いた結果です。
こういう事実もお伝えします。
その上で風にそよぐ姿が美しく、シンボルツリーとして人気があるという事実もお伝えします。
面白い点をひとつ。
シマトネリコには大量のカブトムシやクワガタが集まることがあります。
そういう樹があるということであり、必ず集まるわけではありません。
我が家にあったシマトネリコにはカブトムシやクワガタが集まりました。
同時にそれ以上のカメムシ類がやってきました。
ご近所にもシマトネリコは多いのですが、カブトムシが集まったのは我が家の樹だけです。
今はシマトネリコを撤去しましたのでカブトムシは来なくなりました。