福岡県糸島市 司法書士 ブログ

しゃれた泥棒

「盗む」といっても泥棒をして他人の財物を頂戴する話ではありません。

技術を盗む話です。

プロ野球選手も先輩レギュラー選手の技術を盗むそうです。

これと同じ次元の話なのです。

 

私は損保会社にいる頃に会社の代理人として法廷に立っていました。

簡易裁判所では弁護士ではない者にも代理権を認めてくれます。

それで簡裁で処理できる事件の代理人をやっていたのです。

私が勤務する損保会社Xの自動車保険の契約者AがBとの間で交通事故。

Bは保険契約をしていない。Aの損害が100万円、Bの損害が20万円。

過失割合はAが10%、Bが90%というケースで説明します。

この場合、A→Bの賠償額は20万円✕10%=2万円

B→Aの賠償額は100万円✕90%=90万円

Aは2万円を自動車保険を使って支払えますが、Bは自腹。

そうなると払わずに逃げ切りを図るような事態になったりします。

Aは車両保険契約もしているので、自分の損害分100万円をX社から払ってもらいます。

そうすると、Aの損害はとりあえず補填されます。

Bは「ラッキー!」で済ませたいところですが、そうはいきません。

X社としては、本来はBが負担すべき額をBに求償します。

この求償のために訴訟を提起することがあるのです。

このノウハウをX社に持ち込んで、その専門部署を作り運営したのが私でした。

本人尋問(この場合はB)や証人尋問(この場合はA)も数多くこなしました。

 

ーと前置きが長くなりましたが、私がこういうことをできたのは、技術を盗んでいたからです。

弁護士の先生方にお任せした事件で、訴訟になったケースはほぼ弁護士任せ。

こういう例が損保業界では少なくありません。

しかし、私は必ず傍聴に行き、あるいは準備書面作成の打合せを弁護士とやっていました。

最初から技術を盗む目的もありました。

事実をどう主張すればいいのか? 書面のまとめ方は?

相手に対する訊ね方は(反対尋問のノウハウ)?

法廷で傍聴すれば、相手方の弁護士さんのノウハウも盗めます。

こうして色々な技術情報を合法的に盗んだおかげで、一種の特殊技術者になりました。

こういう泥棒は許されますし、どんどんやればいいと思います。

 

では、今はどうか?盗まれる側になっているかどうかは定かではありません。

訊かれたら惜しみなく伝えていますから、わざわざ盗みの対象に私を選ぶまでもないでしょう。

私自身は相変わらず盗んでいます。

家庭裁判所調査官の面接では、「裁判所は何を知りたいのか?」をチェックします。

それを事前に書面で提出しておけば、被面接者である依頼人の負担は軽くなります。

裁判所側も「なかなかしゃれたことをするじゃないか」と思ってくれるかもしれません。

後見等開始の審判を申し立てるにあたっては、認知症のお年寄りに接します。

その接し方はケアマネージャーの方々から盗むようにしています。

社会福祉士の先生からも色々盗んでいます。

こうして私は日々泥棒に勤しみながら、自分の抽斗を増やそうとしているのです。

そうしておけば、仕事が楽になり、依頼者の方にとってもメリットが大きいですから。

書類作成マシンになることで十分という方はここまでしなくても大丈夫です。

コピペ先生の事務所に就職した方は

「家裁調査官の面接?そんなのケアマネに任せとけばいいよ」

という指示を受けるかもしれません。

さて、指示に従うかどうか?

        ★ 映画「おしゃれ泥棒」(1966年 ウィリアム・ワイラー監督)

          右はオードリー・ヘップバーン(翌年の「暗くなるまで待って」からはしばらく出演が途絶えます)

          左はピーター・オトゥール(「アラビアのロレンス」「ラマンチャの男」の名演も賞には恵まれず)

          大スター共演ですが、この映画は脇役も豪華です。

          ヒュー・グリフィスシャルル・ボワイエ

          そしてイーライ・ウォラック(同年に名作「続・夕陽のガンマン」に出演)

 

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