“Les Feuilles mortes “はシャンソンの名曲です。
英語では“Autumn Leaves”。ジャズの名演が多い有名なあの曲です。
日本語では「枯葉」。日本語詞で越路吹雪さんほかの歌唱が知られています。
その枯葉に化けた蝶がこれです。
タテハモドキ Junonia almana の秋型です。秋型は翅の先端が尖り,裏面が枯葉のような模様になります。
もちろん擬態で枯葉に化けて天敵の目をかわす作戦です。
成虫で林内等で越冬するゆえの「変身」なのです。
この蝶には思い出があります。
1991年に飯塚から宮崎に転勤が決まった私はタテハモドキが群れ飛ぶ大淀川河川敷を楽しみにしていました。
当時の本種は宮崎から大分南部の沿岸部および鹿児島沿岸部から熊本南部や天草の沿岸部に生息するのみ。
南国の蝶との出会いに心をときめかせたのです。
実際に群れ飛んでいました。壮観でした。
それから約10年,私は佐賀に勤務していましたが,嘉瀬川の河川敷を車で走っているときに本種を目にしたのです。
その後の調査で佐賀県内での発生が確認でき,昆虫雑誌に報文を書きました。
これが佐賀県での初の発生確認でした。
それから20年経過した今,本種は福岡県内でも出会えます。
分布を広げようとする種の本能,備わった耐寒性に複数の食餌植物。
単に「温暖化の影響」という話ではないと思います。
かわって次の写真はいわゆるヤママユガです。
庭のバラにとまっていました。飛び古した個体です。
ヘルマン・ヘッセの「少年の日の思い出」に登場するクジャクヤママユ(この種名をタイトルにしている訳書もある)
とは属が異なります。属はAntheraea 種はyamamai, 和名はそのままのヤママユです。
ヤママユもまた枯葉を感じさせる美しい蛾です。
尤も,蛾の仲間には「●●カレハ」というようなそのものズバリの和名をもつ種が多く存在します。
これらもまた見事な擬態の美しさをみせてくれます。
なお,ジャズの名演としての“Autumn Leaves”にかんしては
ビル・エヴァンスの“Portrait in Jazz”
に収録されたものをよく聴いています。
★ タテハモドキ秋型の表面・・・眼状紋は鳥などの天敵に対する威嚇効果を有します。
ヤママユの下翅にも眼状紋があり(上の写真参照)同様の効果があるとされています。