1995年1月の阪神・淡路大震災の際のことです。
私は地震発生から一週間程度経過した時点で神戸市にいました。
当時の勤務地は鹿児島です。
損保会社の現地対策本部立ち上げと調査着手で出張していたのです。
担当したのは長田区近辺です。
火災で焼け落ちた菅原市場は私が担当しました。
人々は落ち着いて行動し、秩序は保たれていました。
ただ、夜間は知りませんでした。
でも、治安は悪化しなかったそうです。
活躍したのは、なんと山口組です。
独り歩きの女性に組員が護衛につきました。
山口組については、地元から称賛の声が上がっていました。
行政よりも早く支援物資を避難所に届けているのです。
女性の生理用品も網羅的に用意しています。
種類がある程度限られた行政の対応よりも肌理細かい配慮があったのです。
水、食料、衣類に携帯用のコンロや電化製品まで。
恐ろしいくらいのスピードで届けています。
上からの号令があれば、一糸乱れぬ行動をとる組織力が発揮されました。
「●日以内に■■をこれだけの量揃えい!」
上の者から指令があれば、その人のメンツを潰せないので若い衆は必死です。
その結果、神戸市民から上がった声。
「やっぱり山口組は違うわ!」
やくざがなぜこういう善行を無償でやるのか?
それは、世間に受け容れられたいという強い願望があるからでしょう。
やくざは、自分たちが世間から白い目で見られていることを気にしています。
「だったら、抗争事件を起こすなよ」ということなのですが、そこは「世界が別」。
やくざにはやくざの掟があります。我々の価値観は通じません。
一方で、やくざも市民としての生活があります。
一般市民として認められたいーこういう気持ちは強いのです。
神戸では、過去にも治安維持に山口組が活躍した時期がありました。
戦勝国民を名乗る在日外国人の不良組織が暴虐の限りを尽くした戦後です。
警察組織では対応できず、兵庫県警が頼ったのが三代目田岡一雄。
★ 映画「三代目襲名」で田岡一雄を演じる高倉健さん
右は吉川勇次(若頭補佐)役の待田京介さん
この映画は、登場人物がすべて実名です。
山口組は警察の「許可」の下、不良外国人集団をやっつけています。
警察官が拉致され殺されたりしていますから、相応の復讐が黙認されたようです。
非常時にはやくざが活躍する。
その地域では、市民からある程度の評価もされている。
これもまた我が国の面白い面かもしれません。