私は寿司好きです。
ただ、こだわりがあるのです。
それは、寿司職人が丁寧な「仕事」をしたネタが好きだということ。
生簀から魚を引き上げ、その場でさばいて握るーこれは好みではありません。
「刺身ごはん」みたいなものは職人技があまり生きないのです。
塩や酢でしめる。
ヅケにする。
寝かせて熟成させる。
こういう職人の手間がかかった寿司が好みです。
簡単にいえば「江戸前寿司」が好きなのです。
ネタは江戸前(東京湾)で獲れるものでなくても構いません。
地元産に素晴らしいものがあります。
それを職人の技術でネタとして昇華させたような寿司を食べたいのです。
福岡にもそういうお店は何軒もあります。
けれども、めったに行くことはありません。
なぜなら、かなり高いのです(東京に比べれば、かなり安いのですが)。
当たり前でしょう。
それだけ職人が手間をかけているのですから。
私が好きなネタはコハダです。
特に初夏のシンコを3枚づけくらいで握った寿司が好きです。
白身も塩や昆布でしめ、コリコリではなくムニムニした食感が好きです。
数日寝かせるので味わいも深くなっています。
車エビも「おどり」ではなく軽く湯通しされたネタが美味しい。
こういう話をすると、新鮮な魚を食べるのが普通の福岡では、
「でも活作りにはかなわないよ」
といわれてしまうのですが、私は断固として江戸前の仕事を支持します。
イカも動いているような活造りは見た目はいいものの、味はありません。
イカが死んで白くなったくらいが甘くて美味しいのです。
これに布を当てて、湯をかけたネタは甘く味わいがあります。
しゃりとの相性も抜群で、しゃりのほどけ具合にネタの柔らかさがマッチします。
このあたりは、職人の技術がないとできない寿司です。
そうすると、高いお代を払う以上はそれに見合う技術を要求する。
ある日、取材は一切お断りというお店で食べることにしました。
「今日の白身は?」
「コショウダイです」
「歩留まりがいいですね」
笑う私に大将が挑戦的な視線を飛ばしてきました。
歩留まりがいい、つまり、仕入れ値が安くお店にとって利益が大きいという意味です。
出てきた寿司に私は納得せざるを得ませんでした、
コショウダイはタイに引けを取らないおいしさながら、安い魚です。
でも、職人の手にかかると深い旨味と見事な食感のネタになっていました。
「うまいですね」
「でしょう?」
ランチタイムにおまかせで握ってもらって2500円。
食べた後に得をした気分になるお店です。
このお店は取材拒否なのでリンクを貼ることはやめておきます。
博多駅の博多口から500メートルくらいの範囲にあるお店です。