司法書士になったものの、なかなかめぐり逢わなかった供託の仕事。
これを初めて経験しました。
古い古い抵当権の抹消登記を申請するための弁済供託。
明治期にYがXから30円(無利息)を借り、所有する土地に抵当権を設定した。
その後にその土地は家督相続や贈与、相続でAの所有になっている。
果たして30円の借金は返済されているのか?
AとしてはYの借財の事情など知る由もなく、Xはとっくに亡くなっていそうだ。
なんとかこの抵当権を抹消したい。
私が調査してもXの所在は知れません。
Yも亡くなっているようでした。事情を訊くことはできません。
ただ、抵当権設定の登記がそのまま放置されているのです。
これを抹消したいということがAの希望。
そこで遅延損害金を付して法務局に供託しました。
その総額は250円弱。
現在の貨幣価値への換算などありません。
飽くまでも元金は30円です。
この供託によって「返した」ことになるのです。
Aからみれば他人の借金です。もしかしたらYは返していたかもしれません。
XもYもいないのだから確認できません。
「返した」事実を供託によって作り出します。
Xがいつか法務局に供託された250円弱を受け取りに来てくれ・・・るとは思えませんが。
これで抵当権の抹消登記の申請をすることができます。
供託にあたっては、事前に法務局と打合せました。
実に懇切丁寧に教えて下さったので、初めてでも安心でした。
★ 写真はイメージです。
私が実際に抹消登記を申請する抵当権に関する登記簿ではありません。