福岡県糸島市 司法書士 ブログ

孤狼の血

映画「孤狼の血」をようやく観賞しました。

小説は出版されてすぐに読んだのですが,映画は公開されてから日数が経過しての観賞です。

映画賞を多く受賞しただけあって面白い映画でした。

原作を忠実に再現しているか・・・というとそうではありません。

人物の設定や場面などはかなり変えてありました。

それから原作の持つテイストを意図的に消していると思われる作りでもありました。

原作にはどこか任侠映画的な雰囲気があるのですが,映画にはそれはありません。

寧ろ,極力そういう雰囲気を排除して乾いたムードの作品に仕上げている印象です。

原作は東映やくざ映画の様々なセリフを上手にとりこんで原作者の「東映愛」をみせていました。

しかし,映画ではそういう面は考慮されていませんでした。

ただし,東映ファンなら「おっ」と気づくシーンがありました。

冒頭の残虐なシーンで竹之内豊さん演ずる野崎が拷問の道具として園芸用刈込み鋏を取り出すシーン。

これは「沖縄やくざ戦争」千葉真一さんがペンチを取り出すシーンを使っています。

次に,松坂桃李さん演ずる刑事日岡が勝矢さん演ずる加古村組の苗代に痛めつけられた後です。

役所広司さん演ずる大上(「おおかみ」ではなく「おおがみ」)刑事が「10年は食らうんど!」と恫喝する場面があります。

ここは「山口組外伝九州侵攻作戦」室田日出男さんのセリフを使っています。

豚小屋の場面や道後温泉で芸者遊びをしているシーンは「実録私設銀座警察」を思わせます。

主人公である大上と日岡の関係性の掘り下げがもう少し欲しいし,日岡の変化の描き方が甘い印象でした。

しかし,時間的な制約を考えれば十分なのかもしれません。

大上とやくざ一ノ瀬の関係は,原作では心の底で通じ合うものがあり,友情が感じられます。

 

それは「県警対組織暴力」の刑事久能(文太)とやくざ広谷(松方)の関係を想起させるものでした。

しかし,江口洋介さん演ずる一ノ瀬と大上との間にはそういう雰囲気はありません。

何とか暴発を抑えようとする大上と反発する一ノ瀬という描き方でした。

上記したようにドライなムード満載なのです。

そして,日岡と一ノ瀬のつきあいが続いていくのが「孤狼の血」の第二弾「凶犬の眼」ですが,

映画ではそういう流れにはなりませんでした。

映画の2作目がオリジナル脚本になったのもむべなるかなという感じです。

映画では原作にはないキャラクターである薬局勤めの女性役として阿部純子さんが出演しています。

この人が最後に日岡に向かって禁断の三文字の言葉を放ちます。

「仁義なき戦い 広島死闘編」で千葉真一さんが脚本を読んで

「これ,本当に言っていいんですか?」

と戸惑いながらも,演技では画面から唾が飛んできそうな勢いで口にしたあの言葉です。

原作との違いに多少戸惑いながらも満足できる作品でした。

東映もその気になれば作ることができるじゃないか!

「ファンの皆さん,東映魂はまだ残っとるがよ」

 

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