相続を原因とする所有権を移転する登記申請が義務化されました。
そのためか、一時期は相続関連の登記申請件数が増えたようです。
しかし、徐々に申請件数は減っており、その原因はわからないようです。
想像ですが、結局のところは誰も困らないから申請しないのでしょう。
申請するにはおカネがかかります。
登録免許税からは逃れられません。
自分で申請するにはハードルが高い。
そうすると、私のような司法書士に依頼することになります。
その結果、報酬が発生してしまうのです。
それなりの出費になることがしばしば。
売却する予定がなければ、不動産の所有名義を変える必要に迫られることはありません。
そうすると、わざわざおカネをかけて登記の申請をするか?
一応は罰則つきの義務化です。
罰則の適用がいやだから仕方なく申請する。
つまり、積極的に申請する動機はあまりない状況なのでしょう。
登記の申請件数に関しては、最盛期に比べて大幅に減少しています。
司法書士の専門分野ですが、そのパイは小さくなりつつあるのです。
司法書士が登記に頼って生きる時代ではなくなっているのでしょう。
でも、登記専念型の方は非常に多いのです。
登記申請書類作成そのものは、実はかなりラクなのです。
面倒な申請書はシステムが自動的に作成。
当事者の名前と不動産の評価額を打ち込むくらいの労力しかかかりません。
不動産の内容も民事法務協会の登記情報をダウンロードすれば済みます。
システムのおかげで自動的に申請書に反映されます。
登録免許税も自動計算。
司法書士が自分の頭で考える点は非常に少なくなっているのです。
まさにAIが代替できそうな分野。
それでも素人の方には難しいかもしれません。
しかし、登記申請を簡素化することになれば、登記専門の司法書士は干上がるかも。
誰もが自分で申請するようになるでしょう。
以前にも触れたのですが、新人もベテランも同じ書類を作ることが求められる登記。
ベテランならではの経験に裏打ちされた申請書なるものは必要とされていません。
定型的すぎるくらいに定型的な作業です。面倒な仕事は少なめ。
相続分野でいえば、戸籍の読み解きは司法書士が能力を発揮する世界かもしれません。
ドル箱の売買に関していえば、本人確認に注意が必要なくらい。
このままでは登記専念型の業務スタイルでは厳しい時代を迎えることになるでしょう。
ある著名な大学教授は、今後の司法書士の生きる道として
1 交渉力
2 調停能力
に活路を見出せるのではないか、という話をしていました。
日常のちょっとしたトラブル解決を忌避するようでは、世間に必要とされなくなる。
こういう叱咤のようにも聞こえました。
弁護士ほど敷居が高くなく、まあまあ気軽に相談できる。
「身近なくらしの中の法律家」
という言葉にはそういう意味が込められているような気がします。
ですが、トラブル解決に前向きな司法書士は少ないのが実態。
司法書士に明るい未来があるのかどうか。
ちょっと心配です。