「勉強してください」という言葉を何度聞いたことか。
これは司法書士会が主催する研修の中での話。
いずれの講師も口にしました。
たとえば、こういう感じです。
「司法書士は不動産登記を仕事にしている以上、
不動産関係の税を知らないようでは仕事になりません」
だから「勉強してください」。
「成年後見は司法書士にとってやりがいのある分野です。
この分野に取り組むには福祉関連の知識が必要です」
だから「勉強してください」。
なぜか、「この本を読んだらいいですよ」みたいなアドバイスはほとんどありませんでした。
ひたすら「勉強してください」です。
尻叩きはこういう感じでも構わないのでしょう。
ただ、問題なのは「勉強」のレベルです。
研修で指示されたのは「知識量の増加」だったのです。
試験では不動産登記における売買の登録免許税は評価額の20/1000です。
しかし、実務では軽減措置があるため20/1000ではないケースがいくらもあります。
でも、こういう知識を得ることを「勉強」とはいわないと思います。
少なくとも私は勉強ではないと考えます。
こういうレベルの知識であれば、わざわざ時間を確保して学ぶまでもありません。
書いてあるものを確認すればいいのです。
寧ろ、毎回確認しなければなりません。暗記に頼るのは危険ですから。
本当に勉強すべきは、業務で関与する各法律の中身であり背景でしょう。
深い理解を得れば、必ず仕事に役立ちます。
マニュアル本や実務書をたくさん持っていても体系書やコンメンタールを持っていない人もいます。
それでも、仕事では困らないようだし、仕事そのものの評判も上々だったりします。
さて、それで面白いのか?と私は思うのです。
自らの法律に対する理解の深まりや、感覚が研ぎ澄まされていく過程を知るチャンスはなさそうです。
無難に書類を作って、仕事が流れて報酬が入ってくるーそれでも構わないといえば、そのとおり。
私はこれでは面白くないのです。すぐに仕事に飽きてしまうでしょう。
カネよりも得難いカタルシスがあるー特に専門職を目指す多くの人の動機はこれなのです。
だから、明日の発表で合格していたら「勉強してください」。
これからが本当に好きなように勉強することができる時間ですので。
<合格したら買うべき・・・と私が思っている本>
①「我妻・有泉コンメンタール民法(第8版」 日本評論社
何かあれば必ず参照する本で、常時デスク上に存在。ただし、家族法は載っていません。
②「民事訴訟法(第7版)」 伊藤眞 有斐閣
③「新民事訴訟法講義(第3版)」 中野貞一郎ほか編著 有斐閣
②は各地裁に置いてあります。③は共著ですが、オールスターキャストの玉稿揃いです。
どちらか1冊が手元にあれば安心ですし、読み応えもあります。
④「新・コンメンタール民法(家族法)」 日本評論社
⑤民法のしっかりした体系書・・・判例・通説が正確に説明され、自説を滔々と述べていないもの
⑥会社法について立法の背景や事情が詳細に述べられている体系書
そのほか、家事事件や信託あるいは破産などに関してもしっかりした本を読むと書類作成をするうえで、
なにを述べればよいかがよくわかってきます(ただし、信託については私は関わっていません)。
★ 私が一番気に入っている会社法の本はこれ。
今は第13版が出ていますが、反映されている改正は平成29年のものまで。
前田教授が亡くなってしまい、遺稿に神田教授と神作教授が補訂を施した
第13版以降の改訂版が出るかどうかは不明です。