今日は俳優高倉健さんの命日です。
健さんは私の母校東筑高校の大先輩であり,日本映画史上最高クラスの俳優です。
私も健さんの映画をたくさんみています。
あれだけの存在感を放つ俳優はそうそういません。
これからも現れないかもしれません。
健さんといえば,寡黙で不器用というイメージが定着しています。
しかし,「網走番外地」シリーズの健さんは陽性で饒舌,おふざけのような演技もこなしています。
この路線の映画をもっと作って欲しかった。私はそう感じています。
そうすれば,晩年の映画が「男高倉健」を観賞するような作品ばかりにならなかったのではないか。
そう思えてなりません。
もうひとつ,健さんはやくざ映画から離れましたが,それがもったいなかった。
健さんのやくざ映画は現実のやくざを描いていないファンタジックなものです。
しかし,それだからこそヒーローとして感情移入できる存在でした。
たしかに任侠路線はすたれ,実録路線にとって代わられました。
しかし,任侠の香りを求めるファンもいたはずです。
山下耕作監督は実録やくざ映画にも任侠の味付けを忘れませんでした。
主人公は今でいう「反社」かもしれませんが,その行動原理には共感できる。それが任侠映画です。
健さんがそれを演じると,そういう人にいて欲しい,さすが健さん!日本一!という感じになるのです。
健さんはやくざ映画に飽き飽きしたのかもしれません。
けれども,健さんは東映を離れた後もアウトロー的な設定の役のときは冴えた演技をしています。
孤高の存在ゆえに裏街道を歩く姿が輝きを放つ面があったように思います。
そして,やくざゆえに我々とは別世界の住人で近寄り難いヒーローたり得たのではないでしょうか。
健さんの命日にこういうことを改めて考えてみた次第です。
★ 写真は上から「網走番外地望郷編」のポスター,「遥かなる山の呼び声」の一場面,そして「山口組三代目」のDVDです。
「望郷編」には杉浦直樹さんが出ています。サラリーマン役などが多い杉浦さんですが,バタ臭さのある風貌とシャープな
身のこなしが本当にカッコいい敵役でした。
「遥かなる」では警察に追われる役どころの健さんです。この映画は健さん主演ということになっています。
しかし,実は倍賞千恵子さん演ずる「民子」という役に重要な意味があります。この「民子」というキャラクターは,
山田洋次監督が「家族」「故郷」でも倍賞さんに演じさせています。
そして,「山口組三代目」は山下耕作監督の任侠映画。実名で山口組の関係者が登場します。