プロレスは八百長である。
こういうプロレス批判は昔からありました。
この批判は間違いです。
プロレスラーは真剣にやっています。
脚本に則り、あるいは阿吽の呼吸で格闘を真剣に演じているのです。
八百長は真剣勝負であるべきものを真剣にやらず、勝ち負けを事前に決めています。
プロレスは真剣勝負ではない以上、八百長はあり得ません。
勝負ではなくレスリングショーとしてプロレスラーは真剣に演じているのです。
演じるために肉体を鍛え上げ、アクロバティックな技を磨きます。
彼らは高度な技術者です。
が、なぜか他のスポーツで限界を迎えた人が「転向」する例が多くありました。
その代表はジャイアント馬場さんです。
プロ野球を故障で引退しましたが、その並外れた体格に力道山が目をつけました。
この力道山も力士からの転向組ですが、現役バリバリで転向しています。
天龍源一郎さんも同じ。
横綱輪島や横綱曙は引退後の転向。
ジャンボ鶴田さんや現在の石川県知事の馳浩さんはレスリングオリンピック代表からの転向。
★ プロレスラー時代の馳浩石川県知事(元文部科学大臣)
限界を迎えたわけではなく、アマチュアから「プロ」になりました。
長州力さんもそうです。
私は力さんのエルボーを背中に受けたことがあります。
新幹線の通路ですれ違う際に力さんの肘が背中に触れただけです。
でも、プロレスファンの同僚からは羨ましがられました。
レスリングはアマとプロではやることが全然違います。
これを知らな人もいました。
私の学生時代の女性の友人がそうでした。
お嬢様らしいお嬢様ですが、プロレスの大ファン。
1人でプロレスを観に行くことも多かったようです。
彼女にレスリング部の友人を紹介したところ、
「ドロップキックとかもやってるの?」
と眼の中にハートが浮かんだような雰囲気で訊ねていました。
他には、柔道からの転向も少なくありません。
過去には坂口征二さん。坂口憲二さんの御父上です。
最近では小川直也さん。
若くして亡くなった橋本直也さんとの「一戦」は意図せずガチンコになってしまったようです。
小川さんのSTOという技(柔道の大外刈り)を何度か受けてノックアウト状態になりました。
トップの柔道家の技に対して受け身が間に合わないようでした。
プロレスはショーですが、たまに小川VS橋本のようなハプニングが起きます。
ショーとはいえ三沢光晴さんのように事故で亡くなるくらい危険なもの。
あれだけ鍛え上げていても、事故を防げないのです。
そのくらいプロフェッショナリズムに満ちた世界です。
★ 徹底した「悪」の演出をしたアブドーラ・ザ・ブッチャー(左)とタイガー・ジェット・シン
この人たちはホンモノのプロです。