NHK-BSプレミアムで放送されたドラマ「グレースの履歴」。
このドラマを視聴して、久々にドラマをみた満足感を味わいました。
脚本上のツッコミどころはまあまあありました。
妻が夫の元恋人に対し、自分の死後の夫を「託す」かどうか?
妻の心情はもとより、夫の意思はどうなる?
妻が自身の妊娠を知った時期についても“?”という展開が。
遺言書の件は既に指摘したとおり。
これらの小さな傷があったとしても、ドラマの完成度は高かったのです。
目だったのは尾野真千子さんの存在感。
主演の滝藤賢一さんは主役であり続けましたが、尾野さんが本当の主役だったと思います。
また、宇崎竜童さんが滝藤さんに対し、
「(元恋人がいる)松山へは行かないの?」と尋ねると、
滝藤さんが「いつでも行けます。この車で」と尾野さんの遺品である車に触れます。
元恋人(広末涼子さん)にまた会う意志があるのか?
会うにしても妻の遺品である車と一緒、つまり新たな恋を始める気はないという意味か?
なかなか考えさせられる会話でした。
最近のドラマはセリフですべて説明してしまうような内容ばかり。
視聴者の解釈を求めません。全部作り手が押し付けてくる印象です。
それらの作品に比べると「グレースの履歴」は視聴者を上手に巻き込む内容でした。
冒頭に亡くなった尾野さん演じる滝藤さんの妻の語りが入ります。
みる側は、その語りと映像により尾野さんの立場で滝藤さんの行動や発言を追い始めるのです。
非常に巧みな導入の工夫でしょう。
上記のように多少の“?”はあるにせよ、近年においては秀作と評価されるはずです。