ウィリアム・アイリッシュをとりあげたのであれば・・・
カトリーヌ・アルレーをとりあげないのは不公平でしょう。
私自身はアイリッシュ作品よりもアルレーのものが好みかもしれません。
早川書房のポケットミステリにアルレーの作品は1作もありません。
東京創元社が翻訳権を独占したのです。
アルレー作品を読むなら創元推理文庫しかありません。
ところが、残念なことに入手可能なのは「わらの女」のみ。
この状況はどうなのか?
もう売れないのかもしれませんが、東京創元社のプライドにかけて再刊してほしいもの。
そういえば、アイリッシュの作品も手に入らないものが増えました。
古典となったサスペンスやスリラーは本格物に比べて扱いが悪い印象です。
S・S・ヴァン・ダインの作品が我が国では新訳版が出ています。
欧米では忘れられた作家だというのに。
なぜなのか?
どうも本格推理小説(謎解き)はサスペンスやスリラーより格上扱いされているようなのです。
人工的な無理のあるトリックよりも、心理サスペンスの方が面白いのに・・・
と私個人は思っています。
クリスティやクィーンもあまり読まなかった私。
反対にスリラー作家ハドリー・チェイスの作品はよく読みました。
学生時代にチェイスの作品を読んでいると、友人から
「チェイスなんか読んでるのか?そういう下品なのが好きなの?」
といわれたことがあります。
下品だとは思いません。人間の欲望をしっかり描き切っています。
それに、読者をどう楽しませるかに徹した職人ぶりは、匠の域。
チェイスのスリラーも1冊を除いては創元推理文庫でしか読めません。
でも、今やすべて絶版です。
出版社は売れるか売れないかで重版するか絶版にするかを決めるのでしょう。
日本の読者は、トリックが好きで心理サスペンスはお嫌いなようです。
でも夏目漱石の「こころ」を激賞する人は多い。
あれは、サスペンス小説なのですが。
と書いてまいりましたが、アルレーの名作「わらの女」は今も読むことができます。
きっと満足されると思いますよ。
★ 映画「わらの女」のパンフレット
ジーナ・ロロブリジダとショーン・コネリーの主演で1964年に作られました。
映像化作品ではNHK銀河テレビ小説のものが素晴らしい出来栄え。
大空眞弓さんと高橋幸治さん、そして加藤嘉さんが主演しました。