「きさん!しまやかすぞ!」
この言葉を最初に浴びたのは23歳のときでした。
損保会社の店頭に押しかけた人に騒がれました。
この件の保険金支払を担当していたのは、私の今の親友さん。
「ヘンな奴が来る」ということで男性が体を張って対応することになったのです。
上司はなぜか早々に昼休みに入ってしまい、いなくなりました。
やってきたのは35歳と53歳のカップルです。
男性が35歳で女性が53歳。見かけは親子みたいでした。
最初からケンカ腰、大声を上げまくって大騒ぎです。
「こらっ!打っ叩くぞ!」
営業部門の人たちが電話で話すのをやめてしまうほどでした。
こりゃまいったな。おいおい、どうする?と内心は苦笑するような気分でした。
私は営業部門の社員に向かってピースサインでもしようかと思いました。
しかし、やったらやったでまた騒がれます。
ひたすら前を向いて「騒ぐなら帰れ」という言葉を丁寧な表現で繰り返しました。
徐々に話が具体的になり、落としどころが掴めました。
飽くまでも押し込まれて負けた体を作らなければ、騒いだ側の顔が立ちません。
上手に軟着陸させて解決に至りました。
「にいちゃん、あんた田川に来たら寄っちゃんないよ!」
と53歳のおばちゃんが嬉しそうに言いました。
「そのときは是非」と心にもない言葉を返します。
「しまやかすぞ!」は北九州地方では使いません。
なんとなく意味はわかりました。
後で「お前の人生をおしまいにしてしまうぞ」という意味だと教えられました。
私の予想どおりでした。
その後も色々な人に何度も「しまやかすぞ!」と言われ続けた私ですが、今も元気です。
私にその言葉を放った人たちとも概ね笑顔で話を終えています。
「田川に来たら寄っちゃんないよ!」を実行する機会はその日の午後にありました。
当時は毎日のように烏尾峠を越えて田川に示談交渉等に行っていましたので。
私は当然のように寄りませんでした。
★ 田川の言葉を知るなら「青春の門」しかないでしょう。
最初に作られた東宝版は
伊吹重蔵・・・仲代 達矢 タエしゃん・・・吉永小百合
信介しゃん・・・田中 健 織江・・・・・・・・大竹しのぶ
塙竜五郎・・・小林 旭 というキャスティングでした。