勁草書房から図書目録が届きました。毎年の恒例行事のようなものです。
勁草書房は、法律を学んだことがある人には馴染み深い出版社でしょう。
なぜなら今の「ダットサン」の版元なのです。
ダットサンとは、我妻榮博士が著した民法の解説書。
1が総則と物権法、2が債権法、そして3が家族法。
つまり、3冊で民放全体を概観できる本なのです。
今の版元、と書いたように、実は元々は別の出版社が出していました。
それは一粒社という会社ですが、21世紀初頭に廃業。
今は勁草書房が受け継いでいます。
受け継いで、改訂を重ねながら今に至るくらいの名著。
3冊合わせると1750頁くらいです。
この分量で民法を全部説明しつくせるのか?
こういう疑問が沸くのですが、一応は説明してあります。
そして、分量的に「入門書」とされています。
が、この辺が危ない罠なのです。
どういうことかというと、文章がかなり凝縮され無駄が一切ない。
それゆえ、一文にこめられた内容を理解するだけの基礎学力が必要なのです。
つまり、民法をよく勉強した人が仕上げに読むような本、それがダットサンです。
薄い本は二つに分かれます。
内容そのものが薄いかわりに、繰り返し読むことに苦労せず、全体像を把握しやすいタイプ。
これは入門書としても学習の仕上げ用としても使えます。
一方で、量は少ないものの、中身が濃すぎるくらい濃く、読みこなすのに苦労するタイプがあります。
このダットサンシリーズもそうだし、芦部教授の「憲法」(岩波書店)もこのタイプです。
さて、勁草書房ですが、人文科学、社会科学から自然科学に至るまで様々な本を出しています。
著作権法や意匠法、商標法のコンメンタールも出しており、実務的な本も少なくありません。
ただ、この会社の得意とするのは基礎法学分野のように感じます。
私は、時折ですが基礎法学に関する本を読みます。
実務面では研究年報である「家事法の理論・実務・判例」をたまに参照しています。
その関係で、勁草書房から毎年送られてくる図書目録はありがたいのです。