私が損保会社の管理職だった頃に若い部下から質問を受けました。
「会社員としてやっていくには何が大事ですか?」
私は迷わず答えました。
「スーツだよ」
部下は面食らっていました。
スーツ,特にジャケットは大事です。なぜか?
私がいた部署は自動車保険金を支払うことを任務としてしました。
そのための調査,示談などを行います。
当時の私はほとんどの時間をデスクに縛り付けられ,ひたすらファイルを読み,決裁をしていました。
部下はそのファイルを完成させるために電話での調査や直接面談による示談をしています。
人と会う以上はまず相手の目が向く部分には気を配らなければなりません。
ゆえにスーツ,特にジャケットなのです。
顔をイケメンにすることはできなくても服装をきっちり整えることはできます。
しわが入っていたり,よれてくたびれたジャケットでは相手に清潔感を感じさせることは難しいでしょう。
なんとなくだらしない雰囲気を漂わせることになります。それは不信感の芽生えに繋がる可能性があるのです。
安っぽいデザインもダメです。ということは,それなりのお値段のものを着なければなりません。
次はロールが効いたシャツにプレスが効いたパンツ。そして上品なネクタイ。
靴は綺麗に磨いているものを履く。
ファッションショーのようですが,これは相手の信用を勝ち得るためにかなり重要です。
爪をきれいに切り,髭はきれいさっぱり剃っておく。髪の毛が調っているのは当然です。
すべてビジネスマナーとしては当たり前のことだろうと思います。
そして,これらは対外的な対応にかぎらず,組織内においても意味があることなのです。
でも意外に抜けている人が多いのも事実です。
中にはスーツは高級ブランド,シャツもネクタイも品よくまとめているのに靴が・・・
という人がいます。画竜点睛を欠く典型です。
靴が汚いと確実に馬鹿にされます。
そういえば,NHKの朝ドラ「梅ちゃん先生」で鶴見辰吾さん演ずる主人公の叔父からの借財の申し入れに対し,
主人公の兄がその靴をみて一抹の不安を覚えるというシーンがありました。
スーツはきっちりしているのに靴が汚かったのです。
脚本家はビジネスシーンをよく理解しているなぁ,と感心しました。
★ 鶴見辰吾さん
お若い頃は典型的な二枚目青年俳優でした。
石井隆監督の「GONIN」あたりからエキセントリックな役もこなすようになり,
今は幅広い役柄で活躍されています。右は「GONIN2」の弾け過ぎた演技。