やくざ映画はすたれてしまいました。
今もVシネマでは細々とつくられているようです。
根強いファンがいるのと、組関係者が新人組員の研修用に使うそうです。
亡くなった岡田裕介東映社長は、生前の松方弘樹さんの企画に対し、
「もうこういうのは作れんのよ」
と答えたそうです。
松方さんの企画は、「県警対組織暴力」の続編でした。

★ 実話をちりばめた「フィクション」の傑作「県警対組織暴力」
1975年の作品のラストで交通事故死する文太さん。
その息子が成長し、やくざ広谷に対し復讐を・・・
こういうストーリーだったそうです。
文太さんの息子役も小栗旬さんが内定するところまで話が進んでいたとか。
実に惜しいことでした。
それでも東映は「孤狼の血」を制作しました。
「なんだ、できるじゃないか」と私は思ったのです。
ただ、内容となると、かつてのやくざ映画が持つ雰囲気を感じさせるものではありませんでした。
登場人物の造型が甘く、表面的な面白さが優先されていたのです。
それでも高い評価を受け、ヒットしました。
世間がやくざ映画を求めていることを実証したように思います。
自分自身の世界ではないやくざの世界。
それを覗き見したいという願望は今もあるのです。
そして、自分自身とは違う世界の話であることに安心感を覚える。

★ 「実録私設銀座警察」は東映の東京撮影所で作られた作品
暴力的な作品ですが、暴力の虚無感を漂わせる傑作です
銀座警察は実在した組織です
その一方で、登場人物の背景や必死さに共感を覚える。
あるいは、憧憬の念を抱く。
「怖いものみたさ」という下世話な興味に加え、一種のヒーローへの憧れを満たすやくざ映画。
コンプライアンスというやや曖昧な基準で制作を自粛する映画会社に本物の創造性があるのか?
私は「事なかれ主義」でしかないように思うのです。
最近の映画作品のほとんどをみたいとは思わなくなりました。
CGやアニメチックな演出が多すぎます。
かつてのやくざ映画は役者さんが体を張って演じていました。
だから、異様な熱気が画面から漂ったのです。

★ 松方弘樹+渡瀬恒彦=異様な熱気
「実録外伝大阪電撃作戦」は敗れ去る側から描いた快作
実際に起きた明友会事件が下敷きになっています。
その熱気に巻き込まれ興奮し、結末を迎えると同時に醒める。
「ああ、俺はまともな人生を送っている。よかったなあ」
これもまたやくざ映画ならではの楽しみ方でしょう。
「暴力表現がいけないのだ」という声もあります。
しかし、人間は暴力をやめることはできません。
ロシアや中国、ミャンマーに中東をみればわかるではありませんか。
人には暴力願望があり、それをどう抑えるかが永遠の課題なのです。
やくざ映画が暴力を煽っているかといえば、それは違います。
むしろ、暴力に批判的な目を向けています。
今の風潮は人間が人間であることを否定しながら表現の自由を制約しているように感じます。
だから、私は古いやくざ映画を見続けるのです。

★ 故星野仙一氏が愛した「修羅の群れ」は大作任侠映画
実在の組織である稲川会の成り立ちが描かれます
