相談の電話が集中する日があります。
たとえば、債務整理の相談。
「ごめんなさい、愚痴ばかり・・・」
相談者さんはこうおっしゃっていましたので、愚痴なのでしょう。
債務整理をするまでもないようでした。
家計の状況を家族で確認し、将来の経済計画を考える必要がある。
こういう内容でしたので、そうアドバイスしました。
私に対して「愚痴」をこぼすことでストレスは多少解消されたかもしれません。
次は、施設の入所者に原状復旧費用請求の予告があったという話。
これは入所者の後見人になっている方からです。
入所者のAさんは上記のとおり成年被後見人なのです。
認知症を発症し、一般人が持つ判断力は失われています。
もともと知的障害もありました。
そうだとすれば、Aさんが故意に、あるいは過失によって部屋を破損したといえるのか?
民法の規定にてらせば、Aさんが施設に対して損害賠償責任を負うことはなさそうです。
では成年後見人Bさんに責任が?
これも無理な話です。
財産を管理し、契約の代理等をすることを任務としているBさんに監督者としての責任は生じません。
また、施設でも他害行為をすることがある点を把握していたのです。、家族関係の愚痴でした。
そうすると、担当職員Cさんが監督者ということになるでしょう。
その使用者である施設運営者Dも使用者責任を負う。
こういう結論になると思われる旨を回答しました。
あわせて、JRから遺族が高額の請求を受けたものの最高裁で責任がないとされた事例を紹介。
認知症のXが線路に侵入し事故が発生しました。
JRは代替輸送手段等の費用を相続人でもある家族Yらに請求したのです。
これは法的な判断を含む話で、相談を受けた際に慎重に検討しなければなりません。

続いて相談ではないのですが、ちょっとした問題を考える機会がありました。
相続放棄をした法定相続人が特別縁故者となり得るか?
結論だけ書くと、可能なのです。
ただ、特別縁故者として認められるにはそれなりの要件を満たす必要があります。
被相続人の債務の相続を免れるために相続放棄。
相続債権者が相続財産清算人選任審判と求める。
選任された清算人が、たとえば相続財産である不動産を換価。
相続債権者が回収し、残額が生じた。
このケースで相続放棄をした法定相続人が残額を特別縁故者として受領できるか?
簡単にこれが認められるようでは困ります。
相続財産清算人審判に要する費用や対象となる財産の管理コストを負担しない。
全部相続債権者に負担させよう。
その間生じるリスクも負担しない。
相続財産清算人に負担させよう。
余りが出たら、「いただきます!」が認められるようでは困ります。
限定承認という制度が機能しなくなるかもしれません。
だから、理論的には特別縁故者になり得るけれど、そのハードルは高い。
こういう実務の運用であるべきでしょう。
相談を受けたり、上記のような問題を考えたり。
こういうことが続くのも司法書士の日常です。
