法律の各分野に関しては様々な体系書や教科書が出版されています。
私の学生時代には、今のようなわかりやすい「教科書」はありませんでした。
研究者を名宛人にしたような体系書を学生が読んでいたのです。
当然のように挫折する人が続出するわけです。
1990年代半ばくらいからでしょう。わかりやすい教科書が出版され始めました。
内容は図表を使って学生が理解しやすいように工夫されています。
共著の本も増えました。
そもそも体系書を共同執筆することはあまり想像できません。
自ら信奉する学説や体系に基づいて書く本です。
さて、共著の本はどうなのか?
個人的には共著の本はあまり好きではありません。
記述が一貫していなかったり、書き手によって脚注の使い方がバラバラだったりするからです。
リーガルクエストなどやアルマなど有斐閣の優れた教科書があります。
しかし、個人的にはいまひとつ馴染めません。
倒産分野の本で共著のものがありますが、特定の著者の記述が異様にわかりにくい。
独特の文章なのです。この先生の執筆箇所は他の本でもわかりにくいのです。
結局、倒産分野は伊藤眞教授の分厚い本が何でも載っており、
かつ記述スタイルが一貫しているので(単著ゆえ当たり前)、読みやすいという結論になりました。
私が読む本のほとんどは単著のものですが、唯一共著でも気にならないのが、
「新民事訴訟法講義」(有斐閣大学双書)です。
欠点を補って余りある内容であり、かつページ数もそこそこなので読みやすいのです。
最近、人気が出ているシリーズに日本評論社の「基本~」というものがあります。
たしかにわかりやすいのです。
私も「基本刑法Ⅰ」「同Ⅱ」を何度か読んでいます。
判例の内容が正確に書いてあるからです。
一方で、学説の対立やその分析に関する記述は非常に少ないのです。
それでも今は司法試験受験生にもかなり人気が高いそうです。
ですが、やはり受験用の教科書であって、じっくり読むタイプの本ではないのです。
ひとことでいえば味気ない本です。
今は本箱の奥に眠っていて、専ら恩師の「刑法講義総論」「同各論」(成文堂)を使っています。
尤も、刑法の本を参照する機会は非常に少なく、レジャーとして読んでいるのですが。
★ 共著でおススメできる本のひとつがこれ。
有斐閣の「憲法Ⅰ」と「憲法Ⅱ」
著者は大家揃いで、記述もバラバラではありません。
岩波書店の「憲法」(芦部信喜)よりは、ずっとやさしく詳しい本です。