「別離」と漢字で書くと、からみあった男女の心の襞が解ける様を連想してしまいます。
が、今回はそういう話ではなく、男性同士の友情とその儚さの話です。
小中高校などで親しい友人ができます。
ですが、いつしか連絡をとりあうことがなくなり、疎遠になる。
大学でできた友人は価値観をかなり共有できる大人になってからの友。
それでも忙しい日常に追われ、友と旧交を温める日もなくなってゆく。
少なくとも私はこういう友人とのつきあいになっています。
前にも書きましたが、親友としては年上の女性1人だけ。
彼女が常に同じ姿勢で私に接してくれたこともありますが、なぜかそうなっています。
社会人になり勤務先なるものができると、そこでも友人はできました。
しかし、友人と思っていたら、熾烈なポスト争いのライバルとみられていたり。
それでも利害を超えた友情は成立しかかったのでした。
が、ある日、その男からいわれました。
「おまえとは合わん」
彼の主張が結果的に通らず、私も彼を支持しなかったことへの恨み言のようでした。
「まあ落ち着けよ。ゆっくり話そう」
とでもいえばよかったのかもしれません。
ですが、私も彼の考え方に馴染めないところが多々ありました。
「そうか。じゃあ仕方がないな」
これであっさり人間関係は終わりました。
彼は唖然とした表情で私をみました。
おそらく、「まあまあ」という対応を予想していたのでしょう。
私にもそれはわかっていました。
彼のそういう甘さというか、自分が怒れば相手は靡くという感覚に愛想がつきていた。
そういうことでした。
翌日から社内で顔を合わせてもプイと横を向く彼に苦笑しながら
「仕方がないな」
と思うほかありませんでした。
非常に可愛げがある男で憎めない。
そうも思うのですが、オレ様中心的発想で周囲を従わせたがる傾向には釘を刺そう。
結論はそういうことで「別離」と相成りました。
上に対して物申すタイプながら、一方で権力に弱い。
そういう面が露骨に出てしまうところもありましたが、サラリーマンです。
仕方がないでしょう。お上には逆らえないのです。
早い話、私がサラリーマンになり切れていなかったということなのです。
ようやくそれに気付きました。
当時の彼も思ったのではないでしょうか。
「あいつは、いつまで経ってもサラリーマンに徹することができない。仕方がない野郎だ」
★ 「白い巨塔」の財前五郎(田宮二郎さん)と里見脩二(山本學さん)
物語の後半で二人は完全に敵対する関係になります。
しかし、二人の間にはたしかな友情がありました。
それはなぜか?