私はもともとは交渉人です。
損保で長い期間にわたって損害賠償を扱う部署に在籍しました。
交渉で最も大切なことは何か?
懸命に自分の主張や説得をするタイプの人がいます。
この人は交渉がうまくありません。
ハッキリ言ってヘタです。
普段でも多弁でサービス精神に満ち、自己アピールに余念がない人がいます。
上記の損保の部署で苦情が多く発生するのがこのタイプの社員です。
交渉がとってもとっても下手くそなのです。
喋りがうまい以上は交渉上手のように思えますが、なぜでしょう?
交渉である以上は相手がいます。
その相手とは利害の対立が生じているケースが多いのです。
そうすると、相手は相手なりに主張したいことがあります。
それをいかに引き出して全部話してもらえるか。
これが自分の主張を相手に理解させる大前提です。
腹いっぱいに言いたいことを抱えた人には全部吐き出してもらうこと。
吐き出せば、それに一定の満足感が生じます。
そして、相手の話を聞く余裕も生まれるのです。
自分が言いたいことがあるのに、相手が懸命に主張したらどうでしょう?
イライラするに決まっています。
だから「受け」が大事。
交渉学の世界では「傾聴」などと表現するアレです。
また、多弁であるがゆえに話の整理がついていないケースも少なくありません。
主張の要点を相手に理解してもらえないままになったりします。
実は、交渉以外でもこの「受け」が苦手な人がいます。
相手の話をよく聞いていません。自分が喋りたいばかり。
上記のように自分を売り込みたくて仕方がないタイプです。
手八丁口八丁で、自分を大きくみせようとする。
話が10倍くらいに膨らむケースもあります。
そのせいか、自分が喋ったことを忘れていたりするのです。
結果的に、後日の発言との間に矛盾が生じたりします。
その結果はいうまでもなく信用されない人というイメージが残るだけ。
私の会社員時代にも口八丁手八丁の上司がいました。
いわゆる出世欲が非常に強く、無趣味で休日出勤大好きというタイプでした。
ただ、この人は話を大きくして自分自身を粉飾するようなことはありませんでした。
私が異動でこの人の部下になる直前のことです。
数人が「ガマンしろよ」といってくれました。
私とその人は絶対に合わないと思ったようです。
しかし、私はそうは思いませんでした。
お互いの姿勢を尊重し、協力すべき点はしっかり協力すればうまくいく。
こう思っていたのです。
その上司も、「アイツとは合わないぞ」と私との相性について周囲に言われていたそうです。
1年経過して上司の異動が決まりました。
お互いを労い合うために慰労会を2人でやったりしました。
その上司は、気分が乗ると部下を「お風呂」に誘うことがあるのです。
最後の宴の後に「風呂行かへんか」と誘われました。
私はその種のお風呂に入る気がないので丁重にお断りしました。
どういうお風呂かは想像にお任せします。
ちなみに、このお風呂は福岡市であれば博多区にのみ存在します。
話が若干それました。
上記のように喋る力よりも「聞く力」が交渉においては重要です。
手八丁口八丁は必要ありません。
口下手くらいの方がちょうといいかもしれません。
ただし、聞くばかりではダメ。
相手の話から解決や妥協のポイントをいかに読み取ることができるか?
しっかり聞いていれば、その中にヒントやサインがみえるのです。
表情や仕種、視線の動きにも注意を払う必要があります。
経験を積めば話の流れを事前に予測できるようになります。
「やはりそうか」と。
そうなってくると交渉そのものはそう難しくないように感じられるはずです。
自分もかなり交渉上手になったな・・・
この己惚れが落とし穴だったりするのですが、その話はまたいずれ。
★ 「聞く力」をアピールした岸田首相
では、傾聴した結果、どのように政権を運営したか?
意外に批判の声が多いようです。
仕事そのものはしっかりやっていると思うのですが。