「吉村弘」と聞くと、多くの人は「誰?」という反応でしょう。
この名前は映画の役名です。
同じ年に2本の映画に「吉村弘」が登場します。
いずれも今の時代にも人気がある映画です。
まず、松竹制作の「砂の器」。
加藤嘉さんの伝説の名演が心に残ります。
脚本を読んで、同じ役を希望したものの別の役になった緒形拳さん。
緒形拳さんの演技もみる者の心を揺さぶりました。
丹波哲郎さんはいつもの丹波節です。
この丹波節が加藤さんや緒形さんの演技と相俟って効果をあげています。
その丹波さんとともに捜査する刑事役の森田健作さん。
この森田さんの役名が「吉村弘」。
何度みても涙が出そうになる作品です。
子役の春田和秀さんのセリフなしの演技も忘れられません。
もう一本は東映の「山口組外伝九州侵攻作戦」。
津川雅彦さんが兵頭組(山口組)の幹部として登場します。
実録やくざ映画にはほとんど出ていない津川さん。
銀次の友でもある別府の石野組長(梅宮辰夫さん)との車中での会話。
そこで二人は微妙な表情を浮かべるのです。
やくざ世界の政治的な意味合いからは銀次(菅原文太さん)が殺されてくれていい。
兵頭組が九州に介入する口実になる。チャンスだ。
でも、そういう政治的な思惑を秘めた自分たちの生き方が嫌になっている。
俺も銀次のように突っ走るような生き方をしてみたい。
映画のラストで警察の取り調べに対し、津川さんは
「夜桜の銀次っちゅうええ侠がおりましてなあ、そいつの葬礼に来たんですわ」
と答えます。
そして、映画はエンディング。
この津川さんの役名が吉村弘。
モデルは、後年、山口組分裂後に結成された一和会の頭目となった人物です。
どちらも1974年の作品です。
役名が同じになったのは偶然でしょう。
映画館でリバイバル上映があれば、大きなスクリーンでみたい2本の映画。
「吉村弘っちゅうええ役がありましてなあ、そいつの名演を見に来たんですわ」
*タイトルは本田美奈子さんのヒット曲「1996年のマリリン」にあやかった・・・つもりです。


