「おまけ」でもない
司法試験に合格した人は,申請すると弁理士と税理士になることができます。
司法書士・行政書士・海事代理士になることはできません。これらは司法試験の「おまけ」ですらないのです。
司法書士以下三つの資格は弁護士が当然にすることができる内容だからかもしれません。
弁理士も同じだと思うのですが,知的財産という世間的にはやや縁遠い世界ゆえ別扱いなのか。
ということは,弁理士以下に記した資格は,ほんらいは不要であり,各分野について弁護士がやればいいのです。
実際に諸外国ではそういう制度の場合が多く,司法書士のような職業が存在する国はみつかりません。
登記にかんしても弁護士の業務です(ドイツでは公証人の業務)。
たしかに税理士は特殊分野といえるので,分けておく実益がありそうです。
しかし,税理士が存在する国もごくわずか。
つまり,多くの国では我が国のように資格を細分化していないのです。
その一方で,弁護士が「刑事専門(知能犯)」「知的財産権専門」みたいに専門分野に特化しています。
交通事故について相談しようとしても「うちは家事専門です」と断られるようです。
我が国でも訴訟ニーズが増えるはずであるという予測の下に弁護士を増やしました。
ところが訴訟ニーズは増えていません。
そうすると増えた弁護士が狭いシマを争うということになってしまいます。
これからは他の士業と住み分けている分野に弁護士が進出することも顕著な現象として起きてくるでしょう。
そうすると弁理士にせよ司法書士にせよ弁護士の職域を狙うどころではなくなるかもしれません。
代書が本分?
司法書士業の微妙なところは,上記にとどまりません。
相談業務にかんしても「どこまでが相談の範疇なのか?」という問題があります。
我々は被告に10億円を請求する訴状を作ることができます。
簡裁訴訟等代理業務の認定考査の合否は関係ありません。
司法書士であれば,誰でもOKの業務です。
ですが,ここで請求内容の相談を受けたり,法的判断を示すことはダメということになっています。
認定考査合格の司法書士であれば140万円までの請求にかぎってOKです。
要するに司法書士に求められている第一義的な任務は,依頼人が求める内容を法的に整序して文章の体裁を整えることです。
これを「代書」というわけですが,今も司法書士は「司法代書人」という側面が強いのです。
そもそも司法書士試験において,法的な判断や解釈の力を求められていません。
試験の内容は「知っているか否か」を問う形式であり,記述式と呼ばれるものは登記申請書の作成能力のチェックです。
たしかに記述試験には法的判断を含む面はありますが,学識に基づくレベルではありません。
条文や判例の結論(判例の展開する論理の理解ではなく)を知っているかどうかのレベルの試験です。
以上をみるかぎり,司法書士はやはり「法律家」ではないように思われます。
そして,この分野は弁護士による代替が可能です。十分に。
不滅の・・・
それでも司法書士はなくならないでしょう。
なぜ?弁護士が好まない仕事(どういう仕事かはあえて書きません)を積極的にやっているからです。
だから家事事件の代理権を獲得するよりも簡裁が管轄の刑事事件にかんする代理権を得る方が
ラクだと思った次第です(昨日の記事をご参照ください)。