昨年8月19日の記事は「ためらい」というタイトルでした。
ユーミンの「時のないホテル」に収録されている曲の歌詞に思い出を重ねた内容です。
このアルバムで私が好きな曲は「ためらい」ではありません。
最も好きな曲は「雨に消えたジョガー」です。
この曲の美しいピアノの音と生命の儚さを感じさせる歌詞のマッチングが素晴らしいのです。
♪ あたたかい朝もやが雨になる ♪
という最初の歌詞からしてなんともいえない儚さを感じさせます。
その後に
♪ 図書館の椅子はひどく冷たく ♪
という歌詞が出てきますが、彼の病名を図書館で調べた彼女の心がよく表れています。
病気で亡くなる運命の人を歌ったこの曲になぜ強く惹かれたのか。
上記の美しいピアノ演奏にギターの哀切な響きは魅力ではありますが・・・
学生時代にはそれがわからないままでした。
時を経た今はようやくわかりました。
ランナーである登場人物のタイムを計っている女性がいて、そこに優しいまなざしを感じます。
でももう走ることはできない。その彼に
♪ できるなら肩を寄せ走りたい ♪
という彼女。
おそらく普通の恋愛関係が苦手で、女性に対する不信感に苛まれていた私の理想だったのでしょう。
そして、当時から私の心には死への強い憧れがありました。
恋しい女性に想われつつ死を迎えたいような気持ちを抱いていたのかもしれません。
★ 写真は「時のないホテル」のアルバムジャケットを再録
このアルバム発表時はユーミンは一応「低迷期」だったそうですが、作品のクォリティは非常に高いと思います。
特にメロディと歌詞の内容を上手に使い分けながら現実と回想を折り込む手法は見事すぎます。