今月21日は松田優作さんの誕生日です。
存命であれば72歳。どういう俳優さんになっていただろう?
ほんとうに惜しい死だったと思います。
昭和63年,優作さんの死を知った私はしばらく茫然としていました。
9月が優作さんの誕生月だったことを思い出したのは,ドラマで鹿賀丈史さんをみているからです。
そのドラマは「黄金の日々」で昭和53年の作品。ちょうど今,NHK-BSプレミアムで再放送しているのです。
この1978年が私にとって良い年だったことは前にもブログに書いたことがあります。
「白い巨塔」「飢餓海峡」「事件」はもちろん,この「黄金の日々」も堪能できるドラマでした。
根津甚八さんを知ったのもこのドラマだったし,鹿賀さんを知ったのもそうでした。
その鹿賀さんが迫真の演技ーというか凶暴すぎる顔をする映画があります。
それが松田優作さん主演の「野獣死すべし」でした。
原作の主人公とは異なるキャラクターを松田さん自身の意向で作り上げた作品です。
カッコよくアクションをこなす優作さんはそこにいません。
無表情で病的,しかも性的に不能という新しい「伊達邦彦」をつくりあげた優作さんの創意工夫には脱帽しました。
最初は「なんじゃ!こりゃ~!」と思いつつ,いつの間にか惹きこまれてしまう映画です。
その優作さんとは対極にある野性的で荒々しい真田を演じたのが鹿賀さんでした。
優作さんの人物造形もさることながら,鹿賀さんはその目が変形してしまうくらいの興奮ぶりをみせてくれます。
あの表情は二度とできないのではないか? 一発OKのシーンだったのではないか? そう思いました。
この作品では小林麻美さんが優作さんに撃たれますが,そのシーンがスロー画像になっていて美しい点も特筆もの。
そういえば優作さん=伊達が映画の中で聴いているクラシックはショパンの曲でした。
これは小林麻美さんが歌った「雨音はショパンの調べ」へのオマージュ?と思いました。
しかし,映画の方が先に作られています。 たまたまそうなったということだけでした。
優作・鹿賀を追う刑事が室田日出男さん。そして,変な訛りのある拳銃密売人の役で佐藤慶さん。
二人とも私が大好きな役者さんです。
慶さんは出演シーンが短いのに鮮烈な印象を残します(「極道の妻たち」でもラストシーンにセリフがない役で登場,
白いスーツ姿で撃たれて死ぬシーンがありましたが,そのワンシーンで強烈なインパクトを与えました)。
室田さんも慶さんも亡くなり,小林麻美さんは映画等には出演されず,今や鹿賀さんが孤軍奮闘の体です。
鹿賀さんにはまだまだ楽しませていただきたい。そう思う次第です。
★ 伊達邦彦に拳銃をつきつけられる室田日出男さん ★ 伊達に拳銃を渡した後に試し撃ちで殺される佐藤慶さん