福岡県糸島市 司法書士 ブログ

配偶者居住権ブルー

択一式問題

司法書士なのだから,たまには法律のことも話題にすべきではないか?

そう思い,ちょっと配偶者居住権について考えてみました。

Aが死亡し,Aの配偶者Bと子Cが相続人であるとします。

Aが遺言書を残していました。

「自宅はCに相続させる。ただし,Bにはその自宅に住む権利を与える。」

さて,自宅についてはどういう登記を申請しましょうか?

1 ①A→Cの相続  ②Bを権利者,Cを義務者として配偶者居住権設定(原因は遺贈)

2 ①A→Cの相続  ②A→Bの相続を原因とする配偶者居住権設定

3 ①A→Cの相続  ②Bを権利者,Cを義務者として配偶者居住権設定(原因は設定)

4 ①A→Cの遺贈  ②Bを権利者,Cを義務者として配偶者居住権設定(原因は遺贈)

5 ①A→Cの遺贈  ②Bを権利者,Cを義務者として配偶者居住権設定(原因は設定)

さすがに今年度の司法書士試験にこういう簡単な問題は出ないと思います(笑)。

我々は常に六法を参照しますが,それをみれば答えは簡単に出るからです。

民法1028条1項に配偶者居住権の発生原因が明記されており,あとは上記の遺言書をいかに読むかです。

A→Cの権利移転が相続なのか遺贈なのかはCの立場に立って考えれば答えが出ます。

以上の次第ですので,正解はここには書かないことにします。

本当の問題

さて,配偶者居住権は,高齢化社会において遺された配偶者の居住の安定を図るためのものです。

上記の設例で,子Cが被相続人Aから家屋を承継し,Bはそれに居住する権利を得るわけですが,

この状況はBが亡くなるまで続きます。民法1030条は,存続期間を「配偶者の終身の間とする」と定めています。

では,Cは承継した家屋を売ることができるでしょうか?

売りに出すことは可能ですが,そもそもBの居住権付きの家を誰が買うでしょうか?

Bが亡くなるまで配偶者居住権付きですので,買い手はつかないでしょう。

仮に,Bが病気で入院したり老人ホーム等の高齢者施設に入らざるを得なくなったとしても,

亡くならないかぎりはBの配偶者居住権は残ります。

次に,Bは老人ホームに入ることにしたので,その費用を得るために居住権を仲の良い友人Dに売ろうと考えました。

可能でしょうか?

できません(民法1032条2項)。

第三として,Bは住み心地が悪くなった家を大幅に改築しようと思いました。できるでしょうか?

修繕はできても(民法1033条1項),改築や増築にはCの承諾を要します(同1032条3項)。

Cが思い入れのある家だから・・・と拒否すれば不可能になります。

理念は素晴らしいけれど・・・

配偶者居住権の理念は素晴らしいのですが,制度上はかなり問題が生じる可能性を孕んでいる。

これが私の思うところです。

一昨日に蘇った想い出のせいで心模様が写真のアジサイの色みたいになっています。

配偶者居住権の制度はスタートしたばかりですが,その将来もちょっとブルーかも・・・。

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