以前にも書きましたが、司法書士会の研修には多様なものがあります。
その中には「レジュメ」と称しながらも「講義録」と呼ぶべき資料を配布するものもあり、
その種の講義は、「レジュメ」を読み上げるような内容になっています。
私は、この読み上げ型が苦手です。
読み上げ型にするのであれば、「資料」を一切配布しなければいいと思うのです。
受講者側は必死で筆記することになります。
これはかなり意味があります。
キッチリ聴いて、手早くまとめて書く。この過程でかなり頭に入ります。
大学ではこのタイプの講義があります。
先生が講義ノートを読み上げ、学生が筆記するというスタイルです。
ですが、「資料」を伴うと、その資料を目で追いながら聴くことになります。
これは眠くなります。どうせなら自分のペースで読んだ方がいい。
我々は、かなりの量の専門書や実務書を読むことが日常であり、
「読む」ことにかんしては、プロかもしれません。
それゆえ自分なりの読み方が出来上がっています。
その中で、誰にも共通するのは「速く読めること」と「量をこなせること」の二点です。
そういえば、過去に受講生が作った訴状だったか、準備書面だったかを読むことを
「バカバカしい」と評した合格者がいました。
要件事実をはずさずに正確に拾っているかどうかを読み取る作業をそう評するのは大胆です。
きっと研修中にそれをやると時間が足りないという趣旨の発言だったのでしょう
しかし、我々は「速く読めること」と「量をこなせること」を必須の能力とされる職種の人間です。
読むことを「バカバカしい」というのはあまりにも馬鹿げています。
数人が作った準備書面くらい短時間でしっかり読めて当然です。
実務においても短時間で質量たっぷりの契約書をチェックしないといけない場面があります。
さほど複雑ではない研修用の設例を基に作られた書面くらい「サラッ」と読めるのですが。
発言した人は、もしかすると「読む」訓練を十分にやってこなかったのかもしれません。
考えながら読み、素早く要点を把握する
~しっかりした本を繰り返し読めば、さほど労せずして身につく力です。
というわけで、これから特別研修を受講される合格者の方々は、
一般に基本書と呼ばれるようなカッチリした本を数冊読まれると苦労が少なくなるでしょう
~という結論にしておきます。
勿論、変な訴状や答弁書を作ってしまわないためにも、
その種の参考書も揃える必要があるのですが。
★ 中田裕康教授の 「契約法」(有斐閣)
山本和彦教授ほかの共著 「倒産法概説」(弘文堂)
いずれも合格後にじっくり読んでおくとよい本です。