訴訟で弁論の更新が行われることは少なくありません。
事件が年度をまたぐと裁判官が転勤で交代するケースがあります。
条文によれば,過去の弁論をすべて口頭で述べるはずです。
しかし,そのような非効率なことはできません。
裁判の迅速化という永年の課題にも合わないのです。
よって「更新します」でおしまいです。
ただ,裁判官が交代することで訴訟の流れが変化することはあります。
交通事故に関する損害賠償請求の訴訟で控訴したケースでもそれを経験しました。
私は加害者側です。
裁判官の事実の捉え方がガラリと変わりました。
高裁の裁判官が,地裁の裁判官3人(合議審でした)について
「あの人たちは誰一人自動車免許を持っていないからですね」
と口にしたときは驚きました。
もちろん公開の法廷での話ではありません。
打合せ室を使った協議の場でした。
被控訴人側は欠席でしたので,この発言を聞いていません。
判決は地裁判決が認めた賠償額を大幅に下回る内容となりました。
被控訴人の過失が認定され,過失相殺額がかなり大きくなったのです。
今から約30年前の福岡高裁のとある支部での判決です。
★ 「白い巨塔」での法廷シーン
これは対質の場面です。対質は滅多にありません。
私は唐津簡裁で裁判官から弁論後の廊下で「対質やってみます?」と投げかけられたことがあります。
原告代理人としてはそこまでは必要ないと思い,そう答えました。
今考えると惜しいことをしたと思います。貴重な経験ができたかもしれないのに。