福岡県糸島市 司法書士 ブログ

真意・真実を見抜く~兇悪の職務上請求~

兇悪のご依頼

昨年9月に「職務上請求」という記事を書きました。

今年になって元カレの住所を調べたいという相談を受けました。

電話をとると、彼女はいきなり話し始めました。

「わたくし、〇〇と申します」とは名乗りませんでした。

この時点で私は依頼を受けない決意がほぼ固まります。

内容は、つきあっていた男性の現住所をどうしても知る必要があるというもの。

理由を訊ねると、「DVの慰謝料を請求する」ということでした。

一応は筋が通っています。

私にその賠償請求の代理人を依頼するのか?

そうではなく、自分で訴訟をするなりの対応を考えているというのです。

私には住所を調べることだけを依頼したいということでした。

訴訟をするのかどうか怪しい。

ストーカーの可能性は?

その後の展開を自分なりに想像します。

そこで、私は、彼女の負傷した部位と負傷の程度を訊ねました。

顔面を何度も殴られ、唇が切れたということでした。

医療機関を受診したのか?

答えに間がありました。しかも答えが、

「病院に行き治療を受けたが、どこの病院だったか思い出せない」

だったのです。

印象的な出来事であるはずのDVに関連する記憶が曖昧というのはどうなのか?

疑わしさが増します。

診断書がなければ、負傷の程度や治療期間もわかりません。

ということは、慰謝料請求は無理。

こういうときに私は最悪のケースを前提に考えます。

そうすると、仮に依頼に応じた場合、私の責任はどうなるか?

元カレの身を案じるのは勿論、司法書士としての自分を守ることも考えるのです。

「訴訟代理なり裁判外の和解交渉なりの依頼でなければお断り」

こういう説明をしてしまうと、「じゃあやってください」ということになるでしょう。

そして、彼女は元カレの住所がわかった時点で「キャンセルします」と連絡をくれるでしょう。

「診断書がなければ受傷の証明ができないし、治療期間や負傷の程度によって慰謝料は変わります。

 殴られて腫れたお顔の写真とかは残っていますか?」

「その男性と交際していたことを明らかにする写真とか手紙のようなものは?」

「訴えるというのはあなた自身の考えですか?」(今の交際相手が裏で操っているのか?)

私は次々と訊ねました。

「もういいです」

電話は切れました。

兇悪の未練

一方、ある人からこういう話を聞いたことがあります。

かつて交際し結婚もお互いに決めていた女性がいる。

理由があって別れたが、お互いの気持ちは変わっていなかった。

別れる際も彼女を愛していたし、彼女も自分を愛していた。

風の便りで彼女が結婚したことを知った。

今どうしているのか? 気になってしかたがない。

そのとき、彼も既に他の女性と結婚していました。

資格を取得する前に彼女と別れ、別の女性と結婚、その後に資格を取得したのでした。

職務上請求書を使える立場になり、元カノのことを調べたくなったそうです。

「職務上請求で前の住所について住民票の除票の写しを取得し・・・」

その人がどうしたか?

実は、その先は知らないのです。

おそらく、個人的な目的で職務上請求書を使うようなことはしなかったでしょう。

私は彼が自制したと信じています。

その点は信じているのですが、彼の話の中で信じていない点もあります。

それは、別れる際もお互いに愛し合っていたという点です。

別れた理由は経済的な問題だったというのですが、彼女にはそれなりの収入があったそうです。

一方の彼は受験に重きを置いていて、アルバイト程度しかしていなかったとのこと。

別れる必要があったか? 彼女が彼を支え続ければよかったのではないか?

ありていにいえば、彼は甲斐性なしで愛想をつかされたということではないか?

だとしたら、口では「あなたを愛しているわ」と彼女はいったかもしれないものの・・・

実は冷めきっていたーというのが真相だろう。

意地悪く私はそう考えたのです。

物語的には「愛し合っていたけど別れた」がドラマティックである。

そう思って彼は想像や願望を交えて語ったに違いありません。

ちなみに、これは福岡県の司法書士の話ではありません。

 司法書士が使用する職務上請求書冊子の表紙

  上の方に“11”と記入しているのは、私にとって11冊目という意味。

  司法書士になって4年半で11冊目は多いのか、それとも少ないのか?

兇悪のまとめ

2つのエピソードを紹介しました。

これらの事実に基づいて私が何をいいたいか?

それは、話をよく聞き想像力や勘を働かせる必要があるということです。

特に紛争処理では、表に出てくる相手方への請求だけに目を奪われてはなりません。

その裏にある真の目的を察知する必要があるのです。

あるいは、語られる事実関係の中に嘘が混入していることを見抜く必要があります。

本人は嘘だとは思わず、願望を真実のように語っているかもしれません。

でも、冷静に聞いていると「?」と感じることができるはずです。

懸命に話す相手の早口でハイテンションの言葉に対応しながら、の分析です。

なかなか難しいかもしれません。

でも、慣れるとできるようになるのです。

基本は、想像や推測と事実の分類、感情に基づく発言とそうでない事実の分類をメモしていくことでしょう。

頭の中でもできるようになります。

声のトーンの変化や喋るスピードの変化、質問に対する反応などもチェックします。

私は総合的な印象で自分なりの結論を出しています。

飽くまでも個人が受けた印象レベルではありますが。

タイトルからは、いずれのケースでも私が真意あるいは真実を見抜いたと思われるかもしれません。

それはわからないのです。無責任でごめんなさい。でも確認する方法がないのです。

たぶん、見抜いたぞー私の願望と想像でございます。

 

ブログ一覧へ戻る

お電話

メール

ページの先頭へ
Loading...