不動産の登記のご依頼を受けた際にお訊ねします。
「登記完了後の登記簿謄本は必要ですか?」
依頼される方々はたまに誤解していらっしゃいます。
登記簿謄本には何らかの効力があり、自らの権利を主張する意味を有する、と。
上記のとおり誤解です。
登記簿謄本は、その時点での権利の状況を明らかにするものではあります。
つまり、事実を明らかにするだけ。
権利者であることを明らかにするのは登記識別情報通知です。
これを持っていれば、権利者として認定されるといってよいでしょう。
抵当権の設定を受けた金融機関は登記簿謄本を欲しがります。
1通520円。これに司法書士が取得の報酬を1000円程度加算したりします。
取得は簡単で、1分とかからずパソコンでできてしまいます。
あとは郵送されてくるのを待つだけ。
1000円も報酬を払う人がいるのはありがたいことだと思います。
私は、1000円に値するほど仕事をした気分にはなりません。
だから実費のみしか請求しないことにしています。
ただ、なぜ欲しがるのか?
登記情報は不動産1件につき331円を払えば、即座に手に入ります。
登記簿謄本をわざわざ取得するまでもありません。
慣習のように登記簿謄本を取得して依頼者等に渡す。
私には意味がないことのように思われるのです。
先日、抵当権者となった金融機関の担当者が「登記簿謄本を取得してください」というので、
「登記情報提供サービスを利用すれば、331円で・・・」
と説明したところ、
「いや、そうなんですが、上司がどうしても登記簿謄本でなければ、というので」
という反応が返ってきました。
現場の担当者レベルでは、無駄に近いことが認識され始めているようです。
抵当権設定者となった方には、
「金融機関が欲しがるので取得し、そのコピーを差し上げます。謄本のコピーですが、それで十分。
無駄に謄本の原本を取得するのに1通あたり520円を払う必要はありませんよ」
と伝えました。
私が、登記簿謄本の位置づけや取得方法を伝えたある依頼者がいいました。
「前に司法書士に依頼したら、当然のように登記簿謄本取得がセットされていました。
実費より高い報酬に『変だな』とは思いましたが、それをいうと機嫌を損ねそうで。
でも、こうして説明を受けると、あれは悪質商法みたいなものだったとわかります」
悪質商法というのはいいすぎかもしれません。
が、説明をしないまま登記簿謄本取得が当然のように扱い、報酬を請求するのはどうなのか?
少なくとも私にはできそうにありません。
★ これは私が土地を購入し,家を建てた際の登記に関する領収書です。
当時の私は素人です。2006年のことでした。
しっかり登記簿謄本取得で報酬の請求を受けています。