整骨院が雨後の筍のように増えているここ20年。
廃業したコンビニエンスストアの建物を利用して営業している整骨院が多くみられます。
聞くところでは、コンビニエンスストアよりも軒数が多いそうです。
かつて、福岡県では整骨院は目立たない存在でした。
平成初期のことです。
交通事故で受傷した人が通うのは整形外科。
整骨院に通う人は少なかったのです。
ただ、東京やその近辺では当時から整骨院が増えていました。
では、整形外科と整骨院の違いは?
整形外科は医師のいる病院または診療所。
整骨院にいるのは柔道整復師。
柔道整復師は「治療」をすることはできません。
できるのは「施術」。
「診断」をすることも不可。
診断書を書くことはご法度。
柔道整復師が書くのは「施術証明書」です。
そもそも整形外科的な診断をしようにもエックス線を使うことができません。
つまりレントゲン検査はできないのです。
画像診断なしに「これは〇〇骨の骨折です」と言う勇気がある人はいないはずです。
脱臼や骨折については、応急処置を除いては医師の同意がなければ施術もできません。
問題なく扱うことができるのは、捻挫・打撲といった軽傷に限られます。
捻挫・打撲も医学的診断に基づいているわけではないので、「所見」ということになります。
それが医学的に正しいかどうかは、医師の診断を受けない限りはわかりません。
単なる腰痛だと思っていたら、内臓の癌だったーこういう例もありました。
もっとも、柔道整復師が施術をしても治らないことに疑問をおぼえ、
「これは内臓の病気かもしれない」
と感じて医師の診察を勧めたのですが。
★ 堂々と「治療」「診療」できると宣伝しています。
街中の看板をみていると、時折ですが、柔道整復師がいる整骨院の看板に堂々と
「治療」 「診断」
と書いていることがあります。
あれは、かなりまずいのです。
隣接業界である医師の領域を犯していることになります。
法律相談に乗ることができない資格なのに、
「相続・遺言書のご相談」
「交通事故・離婚・労働問題のご相談」
を行う「相談会」を開くことが「いけないこと」であるのと同じです。
誰もが他人の役に立つことを目指していることは間違いありません。
それに適した能力がある人もいるでしょう。
でも、資格制限は厳格でなければなりません。
人の生命・身体・財産に被害が生じないための合理的な制約です。
私も司法書士として微妙な相談を受けることがあります。
地裁レベルの訴訟の話はその典型でしょう。
その場合は、弁護士を紹介することにしています。
答えがわかっていても答えられない場合は答えない。
これが、相談者にとっても私にとっても不幸な結果を招かない姿勢だと思います。
柔道整復師の看板を見て、こういったことを考えました。
★ これらはありえないような内容です。
行政書士が交通事故や離婚の相談を受けてはいけません。
苟も「法律家」を名乗るなら違法行為はいけませんね。