養子のことあれこれ
戸籍をみていると養子縁組が行われているケースに出会います。
特に旧民法時代には頻繁に行われていたようで,明治時代の戸籍などではごく
普通に目にするものです。
ところで,養子に関しては,結構誤解があるように感じます。
どういう誤解かというと・・・
(その1)
「AとBの間に生まれた子CがXY夫婦の養子縁組をした。この場合にCはAとBを
相続することはない」・・・× CはXYだけでなくABの相続人にもなります。
(その2)
「M男(変な意味ではありません)とN女が結婚する。N女の姓Bは珍しいもので,
鎌倉時代から続く家柄でもあるので,N女の両親は結婚するにあたり,M男の
姓Aではなく,Bを名乗って欲しいと思っている。この場合はM男はN女の両親
と養子縁組をしなければならない」・・・× A姓を名乗るかB姓を名乗るかは,
婚姻の問題であって養子縁組の必要はありません。
誤解の根底にあるもの
誤解その1はまさに単なる誤解であって,間違うかもしれないな,という話。
しかし,誤解その2はそう単純ではないように思うのです。
どういうことかというと,家を継ぐのは男子であり女子ではないという観念
に基づいていると思われるからです。女性が結婚する場合に男性の氏(姓)
を称するとしても,そこで男性の両親と養子縁組をするわけではないのに,
男性が女性の氏(姓)を称する場合は,「相手の家に入る」=「養子になる」
というイメージがあるのでしょう。
我が国では個人主義が浸透したようにいわれていますが,実は今も「家」
の観念は根強く残っています。結婚披露宴の会場や葬儀の会場でも「●●
家」という表現が使われ続けていますし,自治会の回覧板などには平気で
「戸主」と書いてあったりします。70年以上前になくなった制度なのに。
では,この「家」の観念は悪いものなのでしょうか?
「家」のお話についてはまた後日。
旧民法への対応
ところで,我々司法書士は,現行法に則って仕事を勧めて行けば済むわ
けではなく,実は,旧民法についてもあれこれと知識を求められる機会が
あります。
相続では特にそうで,ずっと相続登記がされてこなかった不動産について
相続登記をしようという話になった際に,過去に発生した相続を旧民法に
則ってチェックしていかなければなりません。
今後,罰則付きの相続登記義務が法制化され,古い古い相続に遭遇する
機会が増える可能性は大きく,事前学習を怠ることはできないのです。
その際に便利なのが以下の本です。
まさに「家制度」の下における家督相続や戸主の隠居などに対応する
ためには最適の本で,読んでも結構楽しい内容になっています。読んで
いると,昔の「家」の観念が少し身近になるかもしれません。