福岡県糸島市 司法書士 ブログ

報酬が高い?安い?

【設例】多くの土地を相続した場合

Aさんが亡くなり,遺された相続財産たる土地が50筆。

こういうケースはあり得ます。

遺族であるBさんから相続人の確定と所有権移転登記申請の代理を受任した場合のお話です。

司法書士はいかほどの報酬で引き受ければよいでしょうか?

相続人がBさんのみであれば,非常に簡単です。

とはいえ,50筆の不動産について登記記録を正確に読み取り,それを登記に反映させる必要があります。

それもシステムがあれば難しくはありませんが,登記記録に目を通す労力を省くことはできません。

私の場合は相続登記は4万4000円~という報酬設定になっています。

仮に,Bさんが戸籍謄本等をすべて集めてれたとすれば,いくらの報酬を請求すべきでしょうか?

少なくとも上記のように登記記録をすべて点検する必要があるので,1通あたり2200円くらいは頂戴するとして・・・

こういう感じで報酬を決めるのですが,面倒かどうかは司法書士個々の感覚による部分が大きいのです。

ある司法書士は6~7万円程度で引き受けるでしょう。

私の感覚ではその程度で引き受けるとすれば,雑な仕事が前提のような印象を抱きます。

上記のように手間を考えると11万円以下にはならないような気がします。

タイムチャージ

タイムチャージの考え方を前提にこの件にどのくらい時間をかけるかを検討します。

そこでサラリーマン時代の時給を計算してみると,私の場合は5,900円ほどになりました。

年間に働くのは240日くらいで1日あたり9時間の労働(残業2時間で19時退勤)という計算です。

今の相談料は30分で5000円ですからサラリーマン時代の時給よりも高額です。

尤も,毎日8~9時間分の相談料を得ているわけではないし,初回は無料です。

実際にはかなり廉価な時給になっているでしょう。

とりあえず5000円/hとしてみます。

上記の50筆の土地にかんしては現地を確認する場合もあるし,ネット上で確認するなどの作業をするでしょう。

Aさんが転居を繰り返していれば,転居先各地で不動産を購入している可能性があります。

これを前提にすれば,相続対象に漏れがないかどうかの調査も必要です。

Bさんとの打ち合わせも50筆の土地についてですから時間はそこそこに必要になります。

こうして検討してみると11万円では安いかな,と思います。

結局は感覚次第

このケースだと50万円くらい請求する司法書士がいてもおかしくないように思います。

システムを使わず,すべてワープロソフトで不動産の内容を申請書に打ち込み,それをチェックする。

かなりの労力です。1文字も間違いは許されないので50万円くらいもらいたいと思ってもおかしくはありません。

思うに,どの報酬請求も正解なのではないか。

結局,労力とはいっても,それは個々の司法書士の感じ方次第です。

客観的な基準があるとすれば,それは上記のように「時間」です。

その時間にしても,司法書士それぞれによって事務のスピードに違いがあります。

事件の難易の感じ方も様々です。

最終的にはすべてが司法書士の感覚次第なのです。

だからどういう請求であっても請求者側としては正解であると考えるほかありません。

最終的な答えは依頼人が出すだけの話です。

「高い!」という批判(非難)は正しいか?

そうすると

「俺なら10万円でやるのに,あの先生はぼったくりだ」

「自分がやればせいぜい5万円の仕事なのに30万円も・・・」

というような批判には根拠がないことになります。場合によっては特定の司法書士に対する中傷になりかねません。

況してや,個々の事件の内容にかんする詳細を知らずに概略(相続事件で土地50筆)と報酬額だけを聞いて

「高い」 「おかしい」

などというのは法律を生業とする者の態度ではありません。

世間では「あの先生は高い」とか「あの事務所は儲け主義」という噂が流れます。

こちらは飽くまでも世間の感覚ですから仕方がないと思います。

しかし,司法書士が同業者の報酬を非難がましく話すのは品位を欠くように思います。

小職の請求額は安いのか?

ちなみに・・・

先日の夕刻に抵当権設定登記の抹消登記申請の代理を受任しました。

即日必要書類を受け取り,翌日には申請を終えました。登記完了まで1週間程度でした。

経費を除く私の報酬は税込みで1万1000円です。

この事件は不動産が2個でしたので,私の報酬設定では報酬額が1万6500円になります。

しかし,加算するような仕事量ではなかったので不動産1個分の報酬を請求しました。

依頼人からは「本当にそれだけでいいんでしょうか?」と言われました。

私の請求額は安いでしょうか?

答えはそれぞれの感覚次第ということです。

 写真は映画「恐怖の報酬」から。

  この写真はリメイク版のW.フリードキン監督作品のものです。

   たまたまNHK-BSプレミアムで放送されたようです。

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