福岡県糸島市 司法書士 ブログ

刺青<TATOO>あり

先日のこと、元暴力団員だった高齢者の保佐開始の審判を求める申立てをしました。

そのためにご本人と面談したのですが、ある公的機関所属で彼を支援をしている女性が

「〇〇さん、私には刺青みせてくれたでしょ!先生にもみせてあげなさい、ね!」

と、ご本人に対して刺青を私にみせるよう「強要」したのです。

刺青をした人は、カタギになった後にそれをみられないように工夫するケースがあります。

自らの経歴を恥じているのでしょう。あるいは相手に不快感・恐怖感を与えない気遣いか。

結局、ご本人はいわれたとおりにシャツをはだけて刺青をみせてくれました。

ついでに「こうして指を詰めてカタギになったんですわ」と左手小指第一関節の欠損も示します。

久しぶりの刺青拝見でした。

 

ところで、私は刺青を見慣れています。

幼少の頃から、若松区のある海水浴場でしばしば刺青のおじさん達をみていました。

大学生になって銭湯に通うようになると、刺青のおっちゃんが何人も来ます。

3人並んで背中を流している姿は、屏風絵が動いているようで面白かったのです。

下絵だけで終わったような刺青のおじいちゃんと話をするようになりました。

私はひそかに「デッサンのじいちゃん」と名付けました。

「ワシはなあ、若い頃に女をとり合って、相手の野郎をスパーッと斬ってやったんじゃ」

と刀で斬る仕種をします。

「それでちょっと懲役に行ってて、スミ(刺青)がここまでになったんよ」

おそらく傷害事件だったのでしょう。

78歳だというデッサンのじいちゃんからは殺気のようなものは感じません。

でも、若い頃の話をする目には生気が宿っている感じでした。

ほかにも中年の刺青のおっちゃんとも友達になりました。

相撲好きのおっちゃんで、私とはよく相撲の話をしたものです。

色が黒く太ったおっちゃんは人が好く、しばしば語り合ったものです。

そのおっちゃんが道路工事の旗振りをしているところに遭遇しました。

私は、部屋を訪ねてきた女性と自転車に二人乗りで大学に向かうところでした。

ちょっと恥ずかしかったのですが、なかよしのおっちゃんです。

「こんちは」と声をかけました。

ところが、おっちゃんは恥ずかしそうに目をそらしてしまったのです。

そうか、工事現場で働いている姿はカッコ悪いと思っているのか。

男稼業にとっては恥ずかしい姿だったのでしょう。

悪いことをしたな。

次に銭湯で会った際には、お互いにそのときのことを話しませんでした。

 

社会人になって鹿児島県の霧島温泉の旅館で出会った人はバリバリの現役の雰囲気。

夜遅くに私が浴場に行くと、一人で風呂に入っていました。

私が入ってきたのをみるや、浴場を出ようとするのです。

「お気遣いなく。ごゆっくりどうぞ」

と声をかけました。

「ありがとうございます」

丁重なお礼がありました。

その人は、自分の刺青が私を不快にさせると思い、入浴を切り上げようとしたのです。

私にはそれがわかったのです。

その後は男2人、無言の入浴が続きました。

先に彼が出る段になり、目礼を交わした次第です。

 

刺青の人にはこちらも気を遣うけれど、刺青を入れた人自身も他人を気遣う。

大人になってこのことがわかりました。

今なら「なかよしのおっちゃん」の旗振り姿に出会っても知らないふりをするでしょう。

 映画「TATOO<刺青>あり」宇崎竜童さん

  三菱銀行猟銃人質事件を起こした人物を描く作品です。

  なお、その人物の愛人と、山口組三代目田岡一雄氏を狙撃した犯人の愛人は同一人物。

  その役を演じたのは、日本司法書士会連合会のキャラクターを務める髙橋惠子さん(当時は関根恵子)。

 

 

 

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