電話で相続に基づく所有権移転登記のご相談を受けることはしばしば。
つい先日も電話を受けました。
相続関係は難しくなさそうで、相続人間の意見も一致している。
司法書士の仕事としてはやさしい部類だろうと思われる内容。
ところが、よくよく事情をお聞きすると・・・
1 当該不動産には高齢の母親が1人で住んでいる。
2 しかも、ここ1年くらいでその母親は子の1人の住まいに転居する。
3 その後は親の居宅を破却する予定。おそらく2年以内に。
4 土地は親戚の所有である。
5 とりあえず居宅の所有権を亡父から相続人の1人に移転する登記を。
こういうお話なのです。
私は言いました。
「あえて相続に関する登記をしなくても済むようなケースですが」
登記をするなら登録免許税が発生します。
さらに私も報酬を頂戴することになります。
しかし、その家屋を2年以内に壊してしまうというのです。
ならば、壊した後に相続人の1人から滅失登記の申請をすれば済むでしょう。
滅失の登記申請については土地家屋調査士に代理権があります。
私が報酬を儲け、お国に税金を納めるまでもありません。
「しばらく使用する予定があるなら、再度登記のご相談を。一度家族でよくお話を」
という形で受任しませんでした。
黙って受任すればよかったのか。
きっと依頼された方は、家屋を破却しても登記申請費用が無駄になったとは思わないはず。
というよりは、気づくことがないはずなのです。
黙ってやさしい登記申請を受任し、しっかり儲けても恨まれることはないでしょう。
でも、私にはできません。
プロとして無駄になりそうなことをあえて黙っているなどプライドが許さないのです。
それに、うしろめたさがずっと心に残るでしょう。
そういうのはいやなのです。
プライドを捨ててカネをとる-私には途轍もなく高いハードルです。
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参考までに上記の依頼を受けた場合の私の報酬は以下のとおり(消費税込み)。
所有権移転登記申請代理(不動産2個まで) 49,500円*
遺産分割協議書作成(簡単なもの) 11,000円
*戸籍謄本等の取得事務・相続関係説明図作成等を含みます。
★ 見積書はこういう感じです。
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司法書士開業から間もないころでした。
似たようなご相談がありました。
近いうちに家屋を壊すなら所有権移転登記申請の対象からはずしましょう。
土地だけで進めます。
こういう形にしました。
その後、空き家を壊し滅失登記申請はご自身でされたそうです。
その方からは非常においしい仕事のご紹介がありました。
何通かの郵便を出すだけで、次々と私の口座におカネが振り込まれます。
その何パーセントかを報酬として頂戴できました。
でも、郵便で送付する文書作成のためにはそれなりの作業が必要。
そして、それは司法書士ならではの知識と技術に基づくもの。
こういう仕事であれば、私は堂々と報酬を請求します。