写真の蝶はスジグロシロチョウ Pieris melete です。
近縁種にはエゾスジグロシロチョウ Pieris dulcinea があります。
その本州亜種は別種として独立し,ヤマトスジグロシロチョウ Pieris nesis となりました。
学名については Pieris japonica をあてるべきであるとか,属はArtogeia をあて,
種名はもともとエゾスジグロシロチョウの種名だったnapiとすべきである,
というような議論があり,まだ定まっているとはいえません。
近年の国内の蝶の新種は,こういう分類上の再検討の結果として生じるもので,
自然の中で未知未見の蝶を発見する機会はまずないといってよいでしょう。
ロマンより科学の時代に移行しているわけですが,それは40年以上前からです。
それでも自然の中で観察する蝶は美しいです。
そして,蝶を観察していると,いろいろなことを教えられます。
図鑑等でしか知らなかった植物を蝶が教えてくれることもしばしばです。
次の写真は,モンシロチョウ Pieris rapae の♂がスジグロシロチョウの♀に求愛している場面です。
♀は明らかに拒否しています。拒否の仕方は種により様々ですが,腹部を後ろに持ち上げるパターンが多いです。
種間交雑が起きている可能性はありますが,交雑個体をみる機会はありません。
私のメインテーマはこういう普通種の分布調査と生態観察で,希少種を追い求めることはしていません。
身近に調べる対象があり,まだまだ新しい知見が得られるので。