刑事ごっこをやって他人を誤解させたらしい私ですが,これも誤解を受けたケースです。
会社員時代にタクシーに乗っていたら部下から電話が入りました。
「そがなこといわれてわりゃ引いたんか?」
「あんとなもんがカバチタレたからいうてワシにいちいち言いなんなや,のう」
「ワシらがあれだけ対応したんに仁義もクソもないのう」
ちょっと反社っぽい被害者の代理人が法外な要求をして困った,上司を出せと要求している。
机を叩いて力み返り,会社に乗り込むと言っている。
示談交渉から帰社した部下からの相談でした。
部下は困っているのか,ある程度余裕があるのか・・・?
私は部下の張りつめた気持ちを慮ってタクシーの後部座席で冗談っぽく答えたわけです。
部下も面白がって「ワシはおやっさんに戦争言われたらやりますけん」などと言っています。
その声も聞こえてしまったようでした。
私と部下の通話を聞いていたタクシーの運転手さんが
「あの・・・もしかして広島の組関係の方ですか?」
最後に「即示談に応じるという前提であれば慰謝料を10%アップする」と答えるよう指示し,
「責任は自分がもつのでしっかり交渉しろよ」
と標準語で話したはずなのですが・・・。
★ 「県警対組織暴力」の辰兄ぃと文太さん
二人とも「倉島警察署」の警察官です。広島弁の警察官とやくざが入り乱れる傑作です。
ちなみに柚月裕子さんの「孤狼の血」の主人公はこの映画の文太さんそのものです。
ところで,上記の会話では交渉において重要な表現を使っています。
それは「即示談に応じるという前提であれば」という点です。
つまり,「即示談に応じないのであれば10%アップの話はなくなるよ」という意味でもあるのです。
そうしないと提示した10%アップ後の額がスタートラインのようになってしまいます。
この種の表現上のテクニックは交渉を生業とする以上は身につけなければなりません。
多くのケースでは相手がその条件を蹴り,
「では10%アップの話はご破算ですよ」
といって提示額を撤回したところで大きく揉めます。
揉めますが「あのときに『即示談に応じるのであれば』と申し上げたはずですよ」と返します。
「しまった!そうだった!」と思う人が意外に多いのです。
ここからは主導権が移ってしまったりします。