「惜しい点」を書いたので、よかった点も書きます。
それは、寅子と同級生である山田ヨネ(土居志央梨さん)の考えの相違を描いたところです。
法律とはなにか?
ヨネ「力を持たない弱い私たちが、ああいうクズをぶん殴る武器」
寅子「法は弱い人を守るもの、盾とか傘とか温かい毛布・・・」
さて、どちらが正解でしょうか?
この点は穂高教授(小林薫さん)が「法廷に正解はない」と述べたのと同様。
どちらも正解であり、どちらも誤答かもしれません。
人それぞれが法律をどういうものと捉えるかは、各人の考え方次第。
書生の佐田優三(仲野太賀さん)が「自分でみつけるもの」といったのが正解でしょう。
「わかりあえない」というヨネ。
「考え方に相違があっても同じように戦う同志」という寅子。
キャラクターの対比はドラマの常道です。
この手法を上手に使っていました。
もっとも裁判長が「判決の趣旨を述べる」といってしまったのは誤り。
あれは、「判決理由を述べます」でなければ。
このあたりは脚本の詰めの甘さでしょうか。
あるいは法律考証が不十分なのかもしれません。
訴状には「請求の趣旨」として
「被告は原告に対し,金〇〇円を支払え」
のように書きますが、ここが判決の主文です。
つまり、判決の趣旨でもあるのです。
請求の趣旨を基礎づけるのが「請求原因」。
これに対応するのは「判決理由」。
実は、この流れは大事です。
まずは、結論。そして理由を述べる。
演繹法よりも帰納法が重視される世界です。
これを示した点も悪くなかったな、と思います。
なお、裁判長役の栗原英雄さんの声のよさも特筆すべきでしょう。
また判決文を読み上げてほしいものです。