ある市役所に戸籍謄本等の交付請求に行った際のことでした。
高齢の女性が電話で話をしていました。
「このあと、すぐに司法書士さんの事務所に行って名義を変えてもらいます。
はい、明日にはもう大丈夫ですから」
これは、もしかすると所有権移転登記申請を依頼する話か?
その時点からの明日に登記が完了することはありません。
場所から考えると、管轄は福岡法務局西新出張所です。
その時期は、登記申請から完了までに約2週間を要していました。
「明日にはもう大丈夫」ではなさそうでした。
どうなっただろう?
その方は私のところに依頼におみえになりませんでした。
おかげで「翌日までに登記を終わらせろ」といわれずに済んだ次第です
★ 「翌日までに登記識別情報通知を発行しろ」
法務局にこういう要求をする人がいるそうです。
勿論、司法書士ではありません。
ある日、抵当権抹消登記申請のご相談を電話で受けました。
費用についてご案内したところ、不満そうな口調で
「ちょっとそれは・・・検討してまた連絡します」
ガチャンと電話は切れてしまいました。
「報酬と登録免許税に経費を含めて2万円以内で済みそうです」
私はこう説明しましたが、「高い!」とお感じになったようでした。
これら2つのケースが生じてしまうのは仕方がないと思います。
登記なんてものは、
「お願いします」「はいはい」「まだですか?」「あとちょっとで終わります」
という感じで、渡哲也名義を渡瀬恒彦名義に変えてしまう手続きと思われているのでしょう。
だから「まさか万円単位で費用がかかる」とは思わない。
こういうことではないでしょうか。
相続関連の登記であれば、へたをすると準備だけで数か月かかってしまうこともあります。
登記申請までに1年以上かかるケースも決して珍しくありません。
遺産分割協議が調わなかったり、そもそも相続人の行方を捜すことが困難だったり。
断念というケースも出るのです。
登録免許税は、不動産の評価額によって高額になる場合があります。
100万円を超えるようなケースも当然あるのです。
それが全部司法書士の懐に入ると勘違いされる場合もあるようです。
幸いに、私はそういう勘違いに基づく非難がましい視線を向けられた経験はありません。
司法書士が登記業務で報酬をいただく。
それは、どうしてもそれなりの額になります。
普段は誰も接することがない世界を熟知し、リスクをとって対応するのです。
その専門性におカネを払っていただくのです。
それを「高い!」と感じるのか「そのくらいで済むのか」と感じるのは人それぞれ。
リーガルサービスなるものは、形があるようで不確かな面があります。
その内容や結果も依頼者の感覚次第。
まことに難しいものでございます。