福岡県糸島市 司法書士 ブログ

近頃の若い・・・

「近頃の若い役者は、本物とつきあったことがないせいか・・・」

これは、俳優梅宮辰夫さんの晩年の嘆きの言葉です。

何を嘆いているか?

 

若い俳優さんたちは、本物のやくざとつきあったことがない。

だから、アウトローを演じてもリアリティを出せない。

こういう話でした。

辰兄ぃによれば、飲食をともにし、ときには風呂(個室付特殊浴場のこと)にも一緒に行く。

こうして本人の人となりを把握し、それを演技に活かすーのだそうです。

今はコンプライアンスの時代です。

なにかといえば、コンプライアンスを持ち出して規制。

辰兄ぃが本物のやくざと一緒に食事をしていたとなれば、少なくともテレビからは締め出しです。

いやはや窮屈な時代ではありませんか。

演技のために本物をみて学ぶーどこがいけないのか?

有名ではなかった頃、北村一輝さんは、ゲイの所作を学ぶためにオカマバーに通い詰めたそうです。

映画「鬼火」の撮影で、主演の原田芳雄さんは

「ゲイの役をこなす役者がみつからなかったのか、それで本物を連れてきたのか」

と思ってしまうくらいゲイの所作を身につけていた北村さん。

その後は大活躍が続いています。

 

さて、損保に勤務していた時代の後半はやくざもエセ同和やエセ右翼も出てこなくなりました。

1998年、私は入社2年目から4年目を過ごした部署に管理職として戻りました。

またアウトローとの愛と抗争の日々だ!

そう期待していたのですが、全然そうではありませんでした。

やくざや暴力団親交者、エセ同和にエセ右翼のおじさんたちと会うには会いました。

でも、その頻度たるや非常に低かったのです。

以前勤務していた3年間は「連日」でした。

完全に拍子抜けだったのです。

その後、その会社から他社に移籍しました。

そして感じたのです。

近頃の若い社員は本物のやくざと交渉したことがない。

だから交渉の中における山や谷を読めない。

交渉相手との呼吸の合わせ方もよくない。

肉を斬らせて骨を斬ったりもできないし、名を捨てて実をとることもできない。

後に辰兄ぃの嘆きの言葉を知った際、「ああ、いっしょだな」と感じました。

 

司法書士業務にも経験できなければ身につかないことが多々あります。

でも多くのことは実務書に書いてあるので、頭では理解できるのです。

経験がなければ無理だな、と思うのはトラブル事件の和解交渉でしょうか。

トラブル処理は積極的に経験すれば、学ぶ点が多いのです。

相談を受けた際に経験が活きます。

交渉の勘所を示したり、譲歩しても問題ない点を相談相手に気づかせたり、

あるいは、譲ってはいけない利益を明確に意識させたり。

でも、取組む人はほとんどいません。もったいない話です。

司法書士がやっているとすれば、消費者金融やカード会社との交渉。

この交渉には緊張感はありません。

話し合うポイントは決まっているし、相手から牙を剥かれることもありません。

ちょっとした言葉遣いの失態をとがめられることもないでしょう。

ヒリヒリした交渉の場ではないのです。

誰でも取組むことが可能なやさしい仕事のひとつでしょう。

 

それにしても、あの3年間は最高だったな。

他の部署ではそうそう経験できない経験を積むことができた。

そのうえ心から尊敬できる友もできた。

しかも結婚までできてしまった。

身につけている交渉術はあの3年間の経験が基礎だったと思うのです。

「近頃の若い司法書士」には経験するチャンスはないかもしれません。

一方、私にとっては、ちょっと自慢できる経験です。

 

 

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