庭に美しい樹木を植えたい。
こういう人は多いのです。
だから一戸建ての庭には樹木が植わっています。
住宅メーカーや建築事務所から「シンボルツリー」を勧められたりもします。
問題は、管理できるかどうか?
度々とりあげるシマトネリコはシンボルツリーとして勧められやすい樹です。
そして、管理に手間がかかる樹種でもあります。
ほかに管理が面倒な種類としては、常緑カシ類も挙げてよさそうです。
これらの特徴は、成長速度が速いことです。
放置していると、自分の手でどうにもできない大きさになってしまいます。
そういう結果を招かないためには、頻繁な剪定作業が必要になります。
ところで、常緑樹を「葉を一切落とさない樹」と勘違いする人がいます。
いわゆる新緑の季節にドサッとほとんどの葉を落とします。
そのときには新芽が芽吹いています。
だから枝だけの状態になることはありません。
「常緑」とはそういう意味です。
葉がまったく落ちないものがよければ、造花を求めるしかありません。
常緑樹の葉は落ち葉になった後の処理が大変です。
土に還るのに時間を要するのです。
照葉樹林の中を歩けば、それがわかります。
反対に、落葉樹であれば分解されるのが早く、土も肥えてきます。
庭木としては「常緑樹>落葉樹」のような認識があるようです。
しかし、これは誤りです。
落ち葉の処理で面倒なのは常緑樹。
成長速度は様々です。
ツバキは常緑樹ですが、成長はゆっくりです。
落葉樹の多くは成長が遅めといえなくもありませんが、速いものもあります。
「常緑樹だから成長速度が速く落葉樹は遅い」という公式のようなものはありません。
庭木には成長速度が遅い種類を選ぶべきです。
これは、それだけで手間がかからないことになるからです。
上記したように、手に負えない高さにしないためには剪定が不可欠です。
成長が遅いと、剪定のペースもそれに合わせることができます。
写真は、我が家のオガタマノキです。
オガタマノキは、成長速度が速い常緑樹です。
それをわかっていて植えたのは、ミカドアゲハに産卵してもらいたいからです。
★ 左 低い位置で切って株立ちにしました。
右 タイミングよくミカドアゲハが産卵に訪れました。
大きく育ちつつあったのを、株元でバッサリと切りました。
その結果、株立ちになっています。
「株立ち」として売られている樹は、植木職人が「加工」した結果です。
株元で主幹を切って、周りのシュートを成長させます。
主幹を切れば、こうして株立ちにすることができ、高さも抑えられるのです。
★ 屋根を超えつつあったオガタマノキを低く抑えました。
主幹を切って、そこから枝を横に広げることも可能です。
★ これはコナラの主幹を低い位置で切り、そこから横に枝を広げたケースです。
コナラで日陰を作るので(雑草対策)、横に広がるように剪定しました。
剪定は主幹を切るだけではありません。
混みあっている枝を抜き取るような剪定が必要です。
むしろ、日常はこれが主な作業です。
主幹の方向に向かっている枝は例外なく切ります。
成長が旺盛な枝も切り、「ちょっと虚弱体質かな」という枝を残します。
風通しをよくすれば、害虫を減らすことができ病気にもかかりにくくなります。
そして、この作業は落ち葉を減らすことにもつながります。
なお、この剪定は、花芽を形成する時期(植物によって様々)の前に実施します。
花芽を形成した後に剪定してしまうと、花が咲きませんので。
庭木の管理が大変なことがおわかりいただけたかもしれません。
とてもではないが、こういうことまではできない。
そう思われる方は、庭木を少なくした方がいいです(「植えるな」とまでは申しません)。
あるいは、お金をかけて造園のプロに定期的に手入れを依頼すべきです。
最近は、狭小の土地に住宅を建てることも多くなっています。
こういう住宅には庭がありません。
都会ではほとんどが狭小土地に2~3階建ての家というトレンドです。
田舎でも狭小土地に住宅を建築している例を目にします。
庭の管理をできそうにないと思う方は、こういう住宅を選ぶのもよさそうです。
広い土地を買って庭も楽しむつもりだった・・・
でも、ここまで大変とは思わなかった。
こういう方は、覚悟して知識と技術を身につけるか、お金をかけてプロに依頼する。
これしかないのです。
庭の管理はとても大変ー私はそう思っています。
それでも、樹木は我々がコントロールできます。
コントロールする気があるかどうか、この点だけが問題かもしれません。